SHORT
□うそなうそ
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「好きじゃないんだ。」
ぽつんと言った。
彼女の目が潤む。
「ごめんね。」
でも、泣きたいのは僕の方だ。
「……ずっと、…好きで……。」
嗚咽も混じった声で、彼女は最後に言った。
でもね、
気付いてあげて。
君が僕を好きなくらいに、あいつも君を好きだから。
僕のこんな汚い手じゃ、君に触れる資格なんてないんだ。
頭のいい君なら分かってくれるよね?
僕の為に死ぬとか言えちゃうなら別だけど、そんな命を粗末にしちゃいけないよ。
まあ、僕がそんなこと言える立場じゃないけどね。
君とあいつならお似合いだよ、本当。
君の頑固なお父さんだって頷くし、学も思想もしっかり兼ね揃えていて。
……うん。
僕も泣きそうだよ。
「ごめんね。」
彼女が去って静かになったところで、また僕は言った。
最後にうそなうそついていいかな。
「好きで、好きで、好きでした。」
うそなうそ
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