小説「西嶋君の送る…」
□西嶋君と黒のYシャツ
3ページ/4ページ
「棚橋のやつはずっと引きこもってるからな。
大吾に彼女ができたと知ればあいつだって現実を見るようになるさ」
と言いながら西嶋は一定間隔で並ぶ電柱をすぎるたびにしゃがみ込む
立ったままでは確認できないがおそらく小型カメラを仕掛けているのだろう。
河西は帰りに全部拾うことを誓いながらようやく見えてきた目的のアパートを見やった
緑の屋根に茶色い板をイメージしたプラスチックの壁
均等に並んだドアだけがなんだか少し浮いてみえる『大樹荘』というこの建物は完全防音になっており、住人のほとんどは夜勤で昼は寝ており、夜はバンドに部屋を貸しているらしいので今は全く人気を感じない。