Long

□銀色の愛しい人
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あの後、私と子が暮らすアパートまで来てくれた先生。

私、彩人、先生の順に横になりながら今までの事をたくさん話した。

先生の腕には私と子の頭が乗っていて、私が話すたびに先生の指が私の髪を弄ぶ。


「なぁ、こっちきて?」

「はい?」


上体を少し起こして先生を見ると先生の寝ている反対側を指す。

そのまま立ち上がり反対側に行くと先生も起き上がり子を起こさないように抱き上げ端に寝かせ布団を掛けてあげると今度は私を抱きしめて横になった。


「もっと、顔ちゃんと見せて?」


私の頬に手をあて額を合わせる。


「先生。」

「うん?」


優しく微笑む先生にありがとうって言ったらいいのか、ごめんなさいって言ったらいいのか判らない。


「しかし、本当にそっくりだな。」

「うん。」

「これじゃあ、親子じゃないって言う方が難しくね?」

「ふふふ。でも、彩人がいてくれて本当に救われたんです。挫けそうになっても彩人の笑う顔を見たら吹っ飛びました。」

「陽花、キスさせて。我慢できねぇ。」


私の口唇を指で撫でるように動かす。

こくりと頷く私の顔を上げて笑う。

先生の顔が近づくと初めてキスした時と同じくらいドキドキした。

軽く触れた口唇は一度離れて深く重なった。


「……っ……ふ…」


先生の舌が私の口内で何かを探すように蠢き、私の舌はそれから逃げるように引っ込んで、何年も前の事なのに私を知りすぎている先生はそれさえも容易い事とすぐに絡められる。

くちゅくちゅと響く音に羞恥を感じていると


「マ、マ?」

「はっはい!」


突然、聞こえた声に先生から離れ背を向け子の傍に寄ろうとする私のお腹に手を置く。


「ちょっ先生。」

「んー?」


私を離す気のない先生に諦めるようにため息を吐いた。


「彩ちゃん、起きちゃった?おいで。」


もぞもぞと傍に寄る子に私の後ろにいる先生の事をなんて言ったらいいんだろう。

私の胸元をぎゅうーっと握る子を腕の中に閉じ込め背をぽーんぽーんと叩く。


「まだ早いから、もう少し寝ようね。」

「うーん。ママ。」

「うん?」

「誰、この天パ。」

「ちょっ、彩ちゃん!」

「あー…。いいから、彩人。明日話すから、今日はもう寝なさい。それと、お前も天パのくるくるだから。」


なんとなく私を挟んで険悪な空気になるのは気のせいか。


「彩ちゃん、お休み。」


背を擦るのを何回か繰り返すと元々眠かったのか小さく寝息をたて始めた。


「彩人寝た?」


私の後頭部に額をつけて話す先生。

胸元で眠る子を起こすのは可哀相だから先生の方は向けない。


「うん。明日彩人にちゃんと話すからね。でも、無理しなくていいよ。」

「何が。」

「だから、先生には先生の生活があるから……」

「ばーか。俺が傍にいたいんだって言ったろ?遅くなったけど、俺のとこに嫁に来なさい。」

「…は…い。」


彩人を生んだ時はこんな未来が待っているとは思わなかった。

二人でずっと暮らしていくと思っていたから。

なのに先生は私に先生をくれるという。

嬉しすぎて涙が出そう。


「明日は家族になろうな。」

「はい……」


ぎゅうーっと私と子ごと抱きしめてくれる先生。

あんなにも遠かった先生がこんなにも簡単に私の傍にいてくれるなんて。

やっぱり先生に伝える言葉は


ありがとう。











読んで下さってありがとうございます。



2009.3.15 林桜花
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