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□銀色の愛しい人
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先生に偶然会ってから早一週間経つ。
先生に会う事も会わない事も決められない私はどうしようもない。
気になるのは自分の知らないとこで勝手に子を生まれて先生は嫌じゃないだろうか。
息子を仕事帰り迎えに行って寝ている子を抱きながら帰る道程にだんだん大きくなる子は私をどう思うのか。
「あっ、明日のお弁当……」
色々考えながら歩いていたらスーパーさえも過ぎていて、割高だけどコンビニに寄ろうと決める。
ずり下がる子を弾みをつけて持ち上げる。
「彩ちゃーん。起きないの?」
「うーん。」
首にぎゅうーっと掴まる子が可愛くて薄く笑う。
コンビニの扉を身体ごと開けようとする私の後ろから扉を開けてくれる人にお礼を言おうと振り向く。
「……先生。」
「よぉ。」
先生は黙ったまま店内用の籠を持ってついてこいと顎で促す。
先生の後ろを子を抱えながらついていくのがなんだか不思議で擽ったい。
「何買うんだ?」
あっ、変な事ばかり考えていて、買うものを見ていなかった。
「すっすみません。」
慌てて、食品コーナーを覗き品を選ぶ。
「これでいいのか?」
「はい。」
子が起きた時のフルーツジュースも買ったしホッとして財布を出そうとしていると先生はそのままレジに向かってしまって、慌ててお財布を鞄から出し追い掛ける。
「せ、先生。お金。」
「いい。」
こちらに振り向きもせず支払いを済ませてしまう先生にどうしていいか戸惑う。
どうして、こんなふうにしてくれるのだろう。
先生の歩く少し後ろを歩きながら、五年前から全然変わらない背中を見つめる。
あんなに遠かった先生がこんなに近くにいるのが嬉しいだなんて不謹慎かな。
「子供、名前何ていうの?」
「あー…。彩人です。」
「俺との子だよな。」
振り向く事なく散歩するような足取りで天気の話をするように聞く先生に答えがみつからない。
「………」
彩人がお腹にいるって判った時、私は嬉しくて、飛び上がる程嬉しくて、それと同時に先生に言ったら、この大事な時にと怒られるかもしれないと思ったら言えなかった。
だから、ひとりで生む事を決心した。
自分の知らないとこで自分の子が勝手に生まれている事を先生が知ったら、嫌な思いをするんじゃないかとか、すごくすごく考えたけど、彩人に生まれてくる子に絶対会いたいとその事の方が大きかった。
もし、先生にこの事実を知られても負担にならないように生むのも育てる事を決めたのも私だから……
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