SHORT

□世界独立記念日
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広い家の中。

たった、一人。

親もいない、兄弟もいない。
いるのは、無関心なメイド。

無関心な、叔父。


つまらない。

世の中がとても。





【世界独立記念日】




世界に一人きり。
そんな気分のまま、生きていくのはもう真っ平だ。
こんな広い世界の中で、どうして俺だけ一人なのだろう。
本当理不尽だ。

「生きてるの、つまんねー」

死んじまおうか。
歩道橋の上から下を見下ろして、そんな事を考える。
だって、此処から飛び降りれば、楽になれると思わない?

「…」

ゆらゆら流れていく景色の中。
車の群れを見ていれば、頭がボーっとしてきて、もう何もかもがどうでも良くなった。

(あ、落ちる…)

落ちる瞬間にそんなゆるい事を考えた。
別に落ちて死んでも、心残りは何もない。

寧ろ生きているほうが辛いから。

(いいや、このまま…)

落ちよう。
そして、死んでしまおう。
そうすれば、このくだらない世の中ともおさらばできる。


それで、いい。



それが、いい。



そう、思ったのに…


「危ないッ―――!!」


(ぇ?)

がっしりと俺の腕を掴んで、歩道橋に…現実と言う世界に連れ戻したのは、
赤い髪が印象的な、長身の、男だった。




「君、大丈夫か!?」

俺の身体を軽々と持ち上げて、ぺしぺしと頬を叩いてくる。
うざい。
どーして死なせてくれなかった。
人間なんて、他人には無関心のくせに、こういう場面に立ち会うと何かしらアクションを起こす人間がいる。

こういうときこそ、無関心決め込めよ。

俺は、フイッとそいつから目をそらした。
その行動で、どういう意味か察したらしい。
男は、目を見開いて俺を見ている。

「もしかして、自殺希望者だっ、たのか?」
「もしかしなくても、そうだよ!」

男の素っ頓狂な声に、俺はむかっ腹が立って、大きく叫んで答えてしまった。
最近になってからは珍しいことだ。

自分で自分に、驚いてしまう。







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