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□血の鎖 第十三章
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「ッ…、ゃ…だ」
「どうして?アイドだって、感じてるでしょ?」
「そん、な…こ、と…あッ」
乳首を服の上から擦られて、アイドは悲鳴にも似た声を上げる。
「んっ、ん…ッ」
涙がうっすら滲んできて、声も身体も熱くなる。
「アイド…」
「は、ぅ…」
耳元で熱っぽく囁かれると、身体の芯が痺れてくるような感覚に陥ってしまう。
「レイ…ッ」
手を退かそうともがいてみても、効果など、ない。
(だ、め…っ)
流されてしまう。
そんな事は誰に言われなくても判っていた。

ユキウラスの街を出て、幾つかの小さな町を転々としながら、フィガロに向かって、早二週間。
運よく拾ってもらえた馬車に揺られながら、向かっているのは、アルディアの街。
アルディアに着けば、フィガロまではもう少しといった所。
大体、半分は来た事になる。
馬車には、昨日の夕方頃拾ってもらった。
前に立ち寄った、ルドフィンからアルディアへの道程は山道が多く、歩いて進むとかなり時間を食う。
そのため、馬車に拾ってもらえたのは、かなり幸運だったと言えよう。
そんな馬車に揺られ、早一日。
明日の朝には着くだろうと業者のおじさんは話していた。
夕方の綺麗な景色を眺めながら、がたがたと馬車に揺られ、たわいもない話をしながら、アルディアへ向かう。
ユキウラスでの嫌なことを忘れさせてあげたくて(そんな事は出来るはずも無いけれど)、何度もキスを落とした。
幸い、馬車は行商用で、二人の他には業者のおじさんしかいない。
荷物に囲まれているから、二人の声もおじさんまでは届かなかった。
最初は嫌がってる素振りのあったアイドも、唇を重ねるうち、徐々に抵抗が薄れて来て。
雰囲気に流され始めた。
キス一つで、とろんとする瞳。
異色の瞳がゆらゆら揺れて、唇がひくつく。
本当に、小さな、些細な行動一つで、過敏に反応する身体。
愛おしくて堪らない。
そんな彼の身体を押し倒して、何度もキスを落とす。
ちゅっと、わざと音を立てて啄むようにキスを繰り返せば、小さな声が何度も漏れた。

そんな反応を見せられれば、心がざわざわと、ざわめくのは、当たり前のことではないだろうか…―――






++++ 血の鎖 第十三章 ++++


 ― 第一幕 喧嘩 ―






「ひゃッ…ふ」
「アイド、声大きいよ?」
「ゃ…ぅ」
そうして、エスカレートした行為は徐々に増して、今に至る。
何度も、アイドに制止されたがその度に「だめ?」と問いかけた。
何ヶ月も、抑制できた性欲。
だけど、最近。
触れれば触れるほど、近付けば近付くほど、それを上回る欲が沸く。

欲しい…―――

と。
それを、抑えていられる内はいい。
けれど、こうして互いしか見えなくなると、それを押さえるのは至難の業だ。
アイドも、前に比べれば抵抗が薄いから、余計助長されてしまう。
「は、ぁ…っ」
いくら、止めてといっても、レイジの行為は止まらない。
寧ろ徐々にエスカレートしていって、それでも、アイドが「嫌だ」と泣けば、少し悲しそうに「だめ?」と問いかけられる。
本当は、直ぐにでも抱きたいのを我慢して、一生懸命気遣ってくれるレイジが判るから、アイドは心苦しくて仕方がない。
(ほんと、は…)
いや、なのではない。
前に比べたら、セックスは恐くない。
勿論、好きでもないけれど、レイジ相手なら、いいかなとは、思える。
でも、時と場所と言う物が物事には存在していて。
それは、わきまえて欲しかった。
だって、此処は馬車の上で。
いつ誰に聞かれるか、見られるか判ったものじゃないのに。
それが、嫌だから、言うだけなのだ。
でも、どんなに口ではそんな風に言ってみても、身体は正直で。
反応してしまう自分が恨めしかった。
首筋にキスを落とされるだけで、びくんと身体がのけぞる。
熱い吐息がかかって、キスされてしまえば、もう頭の芯が痺れて、動けなくなってしまう。
押し返す力さえも沸かないほどに。
「は、ぅ…ぅ、んッ」
そろそろと胸に伸びた指先。
直に触れられて、その冷たさに体が震える。
「寒い、よね」
季節は、もう寒さを湛えるディス(12月)。
吐く吐息が、夜になれば白に染まる時期だ。
ふわり、と降った一枚の毛布。
レイジはアイドの上に覆いかぶさって、にっこりと笑う。
「これで、寒くないだろ?」
「そ、そーいう問題じゃなッ…!」
叫びかけた唇を塞いで、また手を伸ばす。
びくびくと震える身体。
小さく跳ねるその身体に、愛おしさが募って仕方がない。
「可愛い」
「っ、だれ…が…っ」
「アイド」
深いキスが贈られて、もう何もかもがどうでもよくなって。
この身体を見られるのが嫌だと思う気持ちは一緒なのに、レイジが欲しいと思えた。
だから、腕を伸ばして、彼のキスを受け入れて静かに眼を伏せる。
溢れ出した涙が零れ落ちて、静かに落ちていった。
それを、合図にレイジの唇が、乳首に落ちて、アイドはまたビクンと身体を跳ねさせる。
「ぁ、は…ぅ、んッ」
小さな、甘い喘ぎと共に。








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