LONG

□血の鎖 第十章
3ページ/36ページ


ダリッシュは、目の前で繰り広げられるユリウスの快楽ショーに付き合っていた。
別に、自分も楽しみたいからではない。
ユリウスは、放って置けば何をするかわからない。
もともと、何を考えているのか。
ダリッシュ以上に思考の読みにくい人間だ。
ダリッシュにも、ケインにも、幼馴染である二人にすら、見せない顔がある。
(…さしずめ、俺は見張り…)
外は雨。
さらには、ここは立ち入り禁止区域で、閉鎖もされていて、町の人間は近づくことはないと思われる。
だが、万が一ということもある。
この、雨がすぐにやむとは思えないが、外から人が来ないとも言い切れない。
また、マザーが逃げ出そうとした際には、自分がマザーを捕獲する必要もある。
(まぁ、好きなだけやればいい)
もともと、性行為については見られて困るような物だとも思っていないダリッシュにとって、二人が何を後ろでしようとも、関係なかった。
ただ。
何故か、ちくりと痛む、胸の奥。
薄暗い、町並みを見て、ダリッシュは思う。
あの男は、今。
どこにいるだろうか、と。
大事な物は手放すなと、言った自分が彼からこの子を奪った。
(ふ…らしくない)
罪悪感だとでも言うのだろうか。
今更だ。
今更、何を思っても、もうこの手は薄汚れている。
(…マザーは、もう戻らない)
それでも、きっと。
あの男は今も、マザーと仲を戻したくて必死で何かを選んでいるのだろう。
(マザーでさえなければ)
なんて、らしくない考えを振り払って、ダリッシュは入り口の扉のガラスに手を当てた。
(冷たい)
そう、自分は冷たい。
冷たい男だ。
ユリウスと一緒にいて、凍った心。
溶かすことは二度とない。
(永遠に、ない…)
いままでも、そしてこれからも。
罪悪感など、無用の長物なのだと。
言い聞かせた。


そんな、彼の後ろで、アイドは目を白黒させていた。
いくら。
幾ら身体が言うことを聞かないと言っても、この現象だけは、信じたくはなかった。
勃起すると言うことは、身体は快楽を感じていると言うこと。
新たな熱が、快楽が欲しくて堪らないと言っている、ということ。
アイドは、絶句したまま自分の待ちあがるズボンを見つめていた。
雨で濡れたズボンを窮屈そうに持ち上げる、アイド自身。
羞恥のあまり、思わず目線をそらしてしまう。
「可愛いな。久々の私の刺激に、興奮しているのだろう?」
「なっ…!ちが…っ!!」
「違わない。だろう…?」
ユリウスは、嫌な笑みを湛えたまま、ズボンの上からアイドのペニスを、なぞった。
「ひぁ…っ!」
感じる、指先の感触。
濡れて、下着とズボンが肌に密着している分、肌への刺激もすぐに伝わってくる。
「今、解放してやろう」
ジッパーを下ろし、下着ごとズボンを剥ぎ取ってやれば、真っ赤に充血したアイドのまだ幼いペニスが顔を覗かせた。
「ゃ!」
隠そうと、手を出した彼の腕を掴み、ユリウスはにらむ。
「…おとなしく、しなさい」
と、言って。
(っまた…)
抗えない。
見えない、威圧感で押さえつけられる。
恐怖が、抵抗する心を、解放してくれない。
「…まだ、生え揃っていないのか」
ペニスの上、陰毛に舌を這わせ、興味深そうにユリウスは笑った。
「いい情報だ。人工性フィロッドは、発育が遅いと言うわけか」
人間の中に出してしまった人工性フィロッドは、廃品として回収した際に見る以外、お目に掛かったことは殆どない。
そのため、彼らの発育状態など、考えた事もなかった。
考えてきたことは、如何にして価値の高い商品にするかどうか。
売ってしまった後のことはどうでもいい。
売るまでの間のことが大切なのだ。
その後の彼らの発育など、知る由もなかったが、マザーの状態から察するに、彼らは若干、普通の人間よりも発育が遅いようだ。
個人差はあると言えども。







.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ