LONG

□血の鎖 第十章
2ページ/36ページ


ザァァアァァ…

重い、重い、雲の狭間から吐き出される雨の激しいことといったらない。
人々は、軒先に隠れ、天を心配そうに見上げている。
そんな中で、レイジもまた、そんな空の様子を、心配そうに見つめていた。
(さっきまで晴れてたのに)
天気の具合は、自然の成せる業。
人間になどにどうしようもないことぐらいは判っているが、予兆もなしに降り来るときは本当に困ってしまう。
(アイド…黙って出てきて、怒ってないかな)
ダーリーが、何とかしてくれているだろうとは思いながらも、それでも何故か、どこか。
不安がよぎる。
(ごめんね、って…先に言えばよかった)
怖がっていた。
本気で怖がっていた、彼。
嫌だと、だめだと言ったあの時の彼の顔を、きっと。
レイジは一生忘れないだろう。

「アイド」

いとおしい彼の名前を、ポツリと呟けば、雷がひとつ、瞬くように光った。
まるで、嘲る様に。


ひとつ。
街の中で、大きく

落ちた…――――







+++ 血の鎖 第十章 +++


 ― 第一幕 絶望 ―







「ぃ、ゃ…ぁ!」
くりくりと、弄られるのは、胸の突起。
濡れた服を剥ぎ取り、ユリウスは直接、アイドの乳首に指を這わせていた。
指の腹で押さえつけたり、摘んだり、時にはその唇を這わせてやれば、簡単にその身体は跳ねる。
「いや、ではないだろう?」
「ひっ…!」
甘噛みされて、アイドは悲鳴を漏らした。
その悲鳴に、気を良くしたのか、胸元で、彼が、ユリウスが笑った気がした。
舌を這わせて、執拗に舐め回してやれば、甘い声がアイドの口から、熱い吐息と一緒に漏れる。
片方は指先で、もう片方は舌先で弄ばれて、アイドの頭は可笑しくなりそうだった。
こんな、快楽。
久しぶりに味わうのだ。
「ゃ、…あ、ぁ…っ」
首を振り、ユリウスの身体を押し返そうとはしてみるものの、力が腕に入らない。
ユリウスは、アイドの身体を、机の横腹にもたれ掛けさせると、下肢へと指を滑らせる。
「感じているようだな」
「ん、な…こと、な…っぁ!」
ない、と言い掛けた言葉は、中心を撫でられると同時に打ち消された。
アイドは、余りの事に何度も何度も、瞳から涙の粒を零す。
じんじんと。
まるで火傷の様に、疼く熱。
乳首を中心に、その熱は快楽を伴って身体中をめぐった。
(どうし、て…)
幾度、自分に問いかけただろうか。
この、熱は何故自分を苦しめるのだろうか。
快楽を、伴うのだろうか。
(嫌な、の…にっ)
わけが判らない。
本当に、全くと言っていいほど。
相手は憎い男なのに、殺したいほど憎い男なのに、確かに宿る快楽と熱に、アイドは困惑した。
「ん?おやおや…こちらも、相当…私が欲しくて溜まらないと見える」
ユリウスは、そう言ってアイドのズボンのベルトに手を添えた。
手と手の間から、見える光景。
それに、アイドは絶句した。
(う、そだ…っ)
信じたくなくて、それでもそこにある其れが真実で。
アイドは、首を横に小さく振った。
「ぅ、そ…だぁ…っ」
溢れ出してくる涙が止まらない。
当たり前だ。
自分は、今。

憎い相手に、勃起してしまっているのだから。









.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ