SHORT

□奇跡の花
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「あ、あのっ…!」
「…ん?」

頬を赤く染めて、駆け寄ってくる、見知らぬ女子。
……………来た。

憂鬱の第一弾。

「こっ…これっ、読んでください!!」

言うなり、その娘は去っていく。
去っていく途中、友達らしき人物とキャーキャー騒いでるのが見えた。


クリスマスシーズンになると、何故か、告っ子が増える。
それもっ!!!

俺じゃなく、幹斗ばっかり!

いや、そこは別にムカつく場所じゃないんだが…

とにかく、俺の居ないところでやってほしい。
こんな、幹斗………


見たくない。


「…幹斗、俺先行く」
「えっ?いさき…?」

どうせ、一緒に学校に行けば、もっと沢山の告っ子を見なきゃいけなくなる。
毎年の事で慣れてるとは言え、正直きつい。


だって、今はまだいいさ。
幹斗は誰にも振り向いてねーから。

だけど。
一緒にいれば、いつかは見ちまう。


幹斗が、他の女と…………




「…」

やばい。
泣きそうだ。


だから、嫌いなんだ。
クリスマス、
バレンタインと、

幹斗の誕生日、は。



「お、おぃ、いさきってば!」
「…早くしねーと、遅れるし。」
「んな、まだ時間あるじゃねーか」
「今日、日直だし…!」


離れたい。
とにかく、幹斗から。

「いさ…っ」
「来栖君…!」
「わっ…!」


幹斗が、女に捕まったのを良いことに、俺は学校までの道を走った。

……もう、嫌だ…っ!



いっそ、嫌いになれたら良いのに…

そしたら、こんなに悩むこともないのに。
幹斗のことで、こんなに揺らぐことも、
やきもきすることも無くなるのに…


出来ない自分が、さらに自分を苦しめる。





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