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□血の鎖 第二章
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ゴーン。
ゴーン。
広く晴れ渡る空の果てにまで響きそうなくらい、大きな音でその時計は時間を告げる鐘を鳴らした。
「おーおー、大きな音だな」
レイジは、天高く聳え立つその時計台を見つめながら呟く。
この、『ぺバナ』の街にやって来て、4日。
彼らが、旅を始めて早一ヶ月が過ぎていた。


血の鎖

+++第二章+++


  ― 第一幕 絆 ―








「いつ聞いても、この音は心地いいなぁ、な?アイド」
「そぅか〜?煩いだけじゃねーか」
後ろを振り返り、同意を求めるがアイドはしらけた眼で時計台を見つめている。
「お前ってさ…本当そういうの興味ないよな」
「興味持ってなんか特があるのかよ?」
「そりゃー…まぁ」
そう言われると、言葉が返せないのだが。
「それより」
アイドは、近くの塀に上った。
「この街に来て、もう4日だ。だけど、あいつの情報は全くねぇ…」
「そうだな…」
あいつ。
つまり、ユリウスのことだ。
あの日、あの時から、アイドの目的は彼を探し出すことになった。
殺したいほどの憎しみの元凶。
必ず探し出して、ぶっ殺してやらなければ気が納まらないほどの、この気持ち。
アイドは眉間にしわを寄せた。
「あー、ほらまた眉間にしわ寄ってる!」
「え?」
レイジは塀の下から見上げながら、叫んだ。
アイドは、その言葉にきょとんとした様に眼を見開く。
「可愛さ半減だぞー」
「だから…男に可愛いとかありえない」
溜め息をつきながら、塀の上に座り込むアイド。
その眼は、呆れた、と言わんばかりの色を含んでいる。
「何を言う。可愛いと言う感情に、男も女も関係ないって」
「屁理屈。お前の理屈に付き合ってられるかっつーの」
「どっちが屁理屈だよー」
ぶぅぶぅと唇を尖らせるレイジは、ぴょんと飛び降りたアイドを眼で追った。
「この間は素直で可愛かったのに」
はぁぁ、と溜め息をつくレイジ。
その言葉に、アイドの足がぴたりと止まった。
「……なにが、言いたい…」
「何って、この間のコ・トvVでしょ」
からかう様に、レイジは笑う。
この間のこと。
それは、ユリウスと再会を期したあの日。
キスを迫ったレイジを拒まず、唇を合わせたことを差しているのだ。
それを思い出して、アイドは顔を険しくする。
「気の迷いだ」
「そんな風には見えなかったけどなー?」
ぶちっ…
その言葉に、何かの切れる音がした。
「き・の・ま・よ・い・だ!」
笑顔に握り拳。
殺気を含ませながら、アイドはもう一度告げる。
レイジはその様子に、冷や汗を流した。
「そ、そこまで否定しなくても…」
「はッ。勘違いされちゃ困るんだよ」
「勘違い…?」
「俺はまだ、お前を認めちゃいねーんだ」
アイドは横目にレイジを見ながら、低く告げた。
レイジは、少し驚いたように眼を見開く。
「俺は、誰も信じない…それは変わらない」
「でも、俺とはもう一ヶ月一緒にいるじゃねーか」
歩き出したアイドを追いながら、レイジは言った。
しかし、アイドは無言のまま歩を進める。
「まだ一ヶ月だろ」
一ヶ月程度なら、今まででも何人か組んだことがある。
けれど。
「お前も…いつ俺に嫌気が差すかわかんねぇだろ」
「アイド…?」
「…なんでもねぇよ」
裏切り、裏切られ。
そんな世界で生きてきた、彼に。
レイジといる今は、まだ、信じられない世界のような気がしてならないのだろう。
どうしても、まだ…信じられないのだ。
この、今と言う世界が…



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