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□血の鎖 第五章
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眩しい朝日。
差し込む、明るい日差しに、少年は眩しそうに、顔を顰めた。
「…ん」
うっすら開いた瞳は、最初はぼやけてよく見えなかったものの、次第に、辺りの景色に色がついていく。
「…」

あぁ、生きてるな。
最初に感じたのは、これ。
身体を走る痛みは、軽くなったような気はするものの、未だ動かすことは叶わない。
(アイドは…?ジェルリは?)
レイジは何とか起き上がろうとしてみるが、身体は言うことを聞いてはくれなかった。



血の鎖

+++第五章+++


  ― 第一幕 看病 ―



 

脚も、腕も、感覚がないように自分の意思で動かない。
流石に、あれだけの銃弾(正確に言えば、魔力の弾ではあるが)を、身体に受ければ暫くは絶対安静。
と、言うよりも、こうして生きていること自体、奇跡に近いだろう。
「……」
レイジは暫く天井を見つめていたが、やがてゆっくりと瞼を閉じた。
そして、考えるのだ。

最後に、薄れ行く意識の中で、確かに俺は叫んだ記憶がある。
フロートに、真実を。

なんて…

(なんて、馬鹿なことをしたんだっ、俺は…っι)

レイジは深い溜め息を吐き、自責の念に駆られた。
全く関係のない自分なんかが、アイドがこの数年、隠してきた真実を伝えてはいけなかったのに。
(でも、言わないとアイドが可哀想で…)
あんなに、必死で。
自分が憎まれ、蔑まれることも省みず、相手のためを思って、何も言わない彼が、余りにも痛々しくて。
そして、これ以上傷ついて欲しくなくて…

でも、だからと言って自分がしゃしゃり出てはいけなかったのだ。
真実は、当事者同士の間で、交わされなければならなかったのだ。
レイジは、もう一度深い溜め息をつくと、瞳を開けた。
アイドは、そのことを怒っているだろうか。
必死に、フロートの事を気遣っていたのに。
台無しにしてしまった自分を怒っているだろうか。
溜め息ばかりが、徐々に増えていった。

そんな彼の下に、扉の開く音が聞こえたのは、それから直ぐのことだ。
「…?」
誰だろうか、そう思いながら首を廻らせれば、そこには銀の髪を後ろで一つに結んだ愛しい彼の姿。
「アイド…」
「レ…イジ…」
アイドは手に持った、タオルをその場に落としそうにしながら、ベッドに横たわるレイジの姿を見つめていた。
「おはよ」
起き上がれないため、ベッドに寝たまま挨拶を告げれば、彼は眉を寄せて、今にも泣きそうな表情でこちらを見、そして、駆け寄ってきた。




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