遠慮ばっかり
□アイカギ
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「これでよしっ」
宣伝のようで恐縮だが、今度のフェアで使うティンクルのキーホルダーのサンプルを合鍵に付けてみた。
雪名、喜んでくれると良いな。
いつになく浮かれて、来客を今か今かと待ち構える。
〜ピンポーン♪
「はーい」
照れ隠ししても仕方ないのだろうが、わざと宅配業者への対応と変わらない、ダルそうな返事をして玄関に行く。
「木佐さーん、夕飯の材料買って来ましたー!」
「わ、分かったから玄関先で抱き付くなっ」
何度見ても慣れないその顔。
何度触れても慣れない体温。
思わず振り払って部屋へと戻る。
「あ、そーだ雪名」
こんな状態で俺は、何と言って渡せばいいのだろう。
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