素直になれない

□父の日?
2ページ/5ページ

「はぁ、うま…」
「大丈夫か、美咲」
「へーき、へーき」


しかし結局気が大きくなって、美咲は3杯重ねてしまっていた。
秋彦の心配をよそにヘラヘラと笑っていたが、食後、秋彦が冷たい水を差し出すと素直に口に含んだ。


「本当にどうしたんだ、今日は」
「別にー、父の日だから?」
「………」


素面の時より幾分拙い喋り方で言われ、秋彦はグラスをテーブルに置く。
美咲のまえで酒に呑まれるような飲み方をした記憶はないが、それでも思考能力は低下しているわけで。


「ほら、大家って父親みたいなもんだし、実際ウサギさんって保護者みたいなもんじゃん?」
「…そうか、」


ペラペラと喋る美咲と対象的に、秋彦はどんどん不機嫌になる。
うまく機能しない脳で、考えられるのはただ一つの事。


「お前は俺の事をその程度にしか思っていないわけだ」
「はぁ?」
「なら、父親がわりの奴とお前はこんな事をしているのか?」


テーブル越しに身を乗り出し、秋彦は強引に美咲の唇を奪っていた。
美咲も対応力が鈍っているせいで、突き放す事も、目を閉じる事せず、ただ驚きに目を見張っている。


「…っぷは、ちょっ、ウサギさん?」
「許さない…絶対許さない」
「落ち着けって、やめろ!」


美咲の抵抗を物ともせず、秋彦は美咲を床に組み敷き、その華奢な身体に跨った。
心なしか火照った首筋に舌を這わせると、堪えているようなくぐもった声が漏れる。



次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ