素直になれない

□父の日?
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別に深い意味はない。
ただちょっと、やってみたかっただけ。



日曜日。美咲はいつも通り夕飯の仕度を進めるべく台所に立っている。
ただ、いつもと違うのは、テーブルに並べられた品数の多さ。
そして花瓶には小ぶりのバラが生けられている。


「なんだ、今日は豪華じゃないか?」
「え、そ、そんな事ないよ」


一般家庭の料理が食べたいと言う、日頃のリクエストにそぐわないような洒落た料理に秋彦も気付いて目を細める。
しかし深く追求はせずに、黙ってテーブルにワインボトルとグラスを二つ、並べた。


「へ、飲むの?」
「この料理だぞ、赤ワインが合うだろう」
「俺は飲まないからね」
「大丈夫、一口くらい付き合え」


前に一度、秋彦に飲まされたワインで酷い酔い方をした美咲は警戒心をむき出しにする。
その事を良く分かっている秋彦は、控えめに紅の液体を注ぎ、美咲に持たせた。


「いただきます」
「い、いただき…ます」


どちらからともなくグラスをぶつけ、黙って一口飲む。

(これも美味しい…)


落ち着いて静かな、でも気まずくはない食事の時間が進む。




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