新婚みたいな
□不釣り合いだなんて言わせない
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「あ、横澤さん」
「桐嶋さんなら有給取って休みっすよ」
夕刻、ジャプン編集部に顔を出すとこちらがまだ何も言わないうちにさっさと事実を告げられる。
まぁ確かに桐嶋さんに用があったのだが…。
「そ、そうか…」
俺は何も聞いてないし、昨日までピンピンしてたから風邪でぶっ倒れたのではないだろう。
だとしたら……。
「有給の理由とか…知らないか?」
「何でしたっけ?」
「ほら、あれですよ…」
桐嶋さんの席に一番近い男性社員が声をひそめて教えてくれた。
亡くなった奥さんの
命日で、お墓参り。
今日はひよが午前授業だと言っていたし、その可能性は充分ある。
俺に声がかからなかったのは、変な気を遣われているからじゃなくて
俺は当たり前のように仕事だから…だ、と思いたい。
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「来て、しまった…」
合鍵を使って桐嶋さんの家に入ると空っぽだった。
まだ帰ってないのか…。
夕飯とか、用意しなくて良いのか?
思わず探るようなメールをやりとりする。
(勝手に上がったぞ。ひよもいないが、夕飯どうするんだ)
(あー、悪い。今日ひよも俺も外食だから、適当にして)
(分かった)
それっきり連絡の途絶えた携帯を机の上に放る。
良いや、何だか何も食べたくない。