お題
□ 全開笑顔にもう降参
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「ヒロさん、ジューンブライドって知ってます?」
「あぁ、なんで6月かは知らねーけど」
夕食の時に野分にそう聞かれたのは、6月ももう終わろうという蒸し暑い日の事。
唐突すぎて、何を意図しているのか分からない。
ニュースででもやっていたんだろうか。
「ヒロさん、」
「んだよ」
「これ、書いてくれませんか」
夕食を食べ終わり箸を置くと、野分が鞄から一枚の紙を取り出す。
それは、俺はもう一生書く事はないだろうと覚悟を決めたもの。
「婚姻、届…」
「はい、6月中に書いて欲しいんです!」
本気か冗談かなんて、聞かなくても分かる。
でも、ジューンブライドって素敵じゃないですか、と盛り上がる野分に突っ込みたい事だらけで、
こちらはいまいちテンションが上がらない。
「野分…この国の法律では俺たちみたいなのはだな…」
「分かってます!だから書いてくれたら、これは俺が大事に取っておきます」
「……」
周りに認められなくたって良い。
それはただ、自分たちだけのために。
「…仕方ねーな」
「書いてくれるんですか?」
「なくすんじゃねーぞ」
「はい!」
全開笑顔にもう降参
ほら、これでいーんだろ、
「でも、何で急にこんな事…?」
「えっと…先輩が……」
(あの腐れ金髪野郎の入れ知恵か)(まぁ、野分がこんなにも嬉しそうだから)(今回は恨まないでおいてやる)
end.
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