お題
□冗談なの?本気なの?
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「雪名、ちょっと寄り道してかねぇ?」
「どこですか?」
「んー、その辺見るだけ」
仕事帰りに雪名を書店まで迎えに行く。
池袋の街並みは、まだ閉店していない店もあり、ネオンやら看板やらで結構明るい。
すぐに帰っても良いのだけれど、帰ったらやる事は決まってるから、たまにはこんな時間があっても良いと思う。
…とウィンドウショッピングを楽しむはずが。
「あ、雪名じゃん!」
「本当だ、何してんだよ」
近づいて来る2人の若者。
多分雪名の大学の人…かな。
どっちもそれなりにイケメンだけど、雪名には及ばないな…なんて早速顔で判断してみたり。
眼鏡の奴の視線がこちらに向く。
「…誰?バイト先の人?」
「あ、えーと、北海道にいた時からの連れで。な、翔太」
「……お、おぅ」
誤魔化すためとは言え、こんなにサラッと下の名前で呼ばれたのは初めてで。
意識しちゃいけない、バレちゃいけないのに、顔に熱が集まっていく。
「へえ、21にしちゃ童顔」
「羨ましいんだろ、お前老け顔だもんな」
ヘラ、と笑うこいつらは、完全に俺をタメと勘違いしているようで。
21にしても童顔なら30としてどうなんだか…。
「じゃーな、俺ら今から飲みだから」
「今度カラオケ行こうぜ、翔太も誘って」
「ん、また」
結局誤解を解けないまま、雪名の同級生と別れた。
はぁ…何か短時間でドッと疲れたな。
つかカラオケ行こうぜ、とか…
冗談なのか?本気なのか?
いや、答えは薄々分かってる。
「…すみません、名前呼び、嫌でした?」
「そうじゃなくて、誤解といとけよ」
「えーっ、別に良いじゃないですか」
「良くない!俺は社会人だっての。大学生とカラオケなんか行けるか」
わいわい言いながら自然と2人で俺の家へ。
雪名が変な誤魔化し方したせいで複雑な気分だから、
名前呼びは少し嬉しかったんだ…なんて絶対言ってやらないけど。
→オマケ
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