お題

□時として無神経
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「仕事持って帰ってるんですから!」
「そんなの、うちでやれよ」


…となんだかんだ連れ込まれた俺。
ソファでネーム直しを始めて、高野さんを丸っきり無視する事にした。
取り敢えず集中、集中。


「なー、小野寺」
「ぅわっ、な、なんですか!」
「別に」


隣に座った高野さんが煙草を点けてふかし始める。

…な、なんか近くないか。
何かされるんじゃないか?

別に期待しているわけじゃない。
むしろ絶対やめて欲しいんだけど、だけど……。


「お前、さっきから全然進んでなくね?」
「そんな事ないです!ちょっと迷ってただけで…」
「どこ?」


咄嗟についた嘘を本気にした高野さんが原稿を覗き込んでくる。
近い、これは確実に近い。


「見えねーよ、手どけろ」
「うわぁっ、あ…」

バカみたいだけど、ちょっと触れられただけで俺の手はペンを手放して。
赤ペンは原稿に余計な線を残して床に転がって行く。

どうしよう…。


「何お前、緊張して固まってたの?」
「な、何言って…」


…図星だ。
いや、ネームを見てくれようとしたのは、上司として当たり前なんだけど。
高野さんなりの、優しさなんだけど。


時として、無神経。


「えーはい、そうですね、そうかもしれませんね!」
「何だそれ。さっさと仕事しろ」
「だったら離れてください!」
「…嫌」


やっぱり俺、この人が嫌いだ。

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