お題

□愛くるしい
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素直にならない律にやたらとイライラした時期があった。
あの手この手を使って何とか俺に対する気持ちを言わせてやろうと。


まぁ一度言わせてしまうと今度は余裕が出てきて、
んでもって言わせてやりたいけど、言わない状況を楽しむ事もできてきて。


「小野寺、いねーの?」
「いますよ、チャイム連続で鳴らすのやめてもらえます?」


深夜に家に押しかけると
アンタはガキですか、とあからさまに不機嫌な顔をした恋人に出迎えられる。


「はいこれ、武藤先生サイン会の会議、一日早まったから」
「え、本当ですか?」
「ホント、だから急いで資料渡しにきた」


茶封筒を差し出すと、嫌だな、という表情丸出しで受け取る律。
まぁ確かに仕事立て込んでるしな。


「…じゃ」
「え……?」


そのまま律に指一本触れずに立ち去ろうとすると、元から大きめの瞳が更に見開かれる。
言わんとしている事が分かりすぎて面白くて、俺は仏頂面をかろうじて保ったまま律を見下ろした。


「本当にそれだけですか?」
「…そうだけど」
「……あの…」
「何かあんの?」


真っ赤になって、
きっと期待しているのに恥ずかしくて言えなくて、
1人で勝手に動揺している。



何こいつ、可愛いんだけど。
愛くるしい。


「あの、高野さん」
「分かった、襲ってやる」
「いや、俺そこまで言ってませんよね?」
「世の中には言わなくたって分かる事もある」


だからお前もそろそろ分かれ。
どれだけ俺がお前を可愛く思ってるかって。



end.
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