お題
□人気者の君に妬く
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「何逃げてんだよ」
「逃げてねーよ、てかアンタこそ飲みに行ったんじゃないのか」
暫くして後ろから絡んできた腕を振りほどく。
振り返ると相変わらず人を馬鹿にしたような笑みの桐嶋さんがいた。
「何アレくらいでピリピリしてんだよ…早く行こうぜ、ひよが待ってる」
「アレくらいじゃねーよ」
「……?」
スルリと俺を追い越して行った桐嶋さんの腕を、今度は俺が後ろから掴んだ。
自分でも何がしたいんだか分からない。
ただ必死だった。
「どれだけ女子社員からモテてるか、アンタ自覚あんのか?!」
「……ぷっ」
目を丸くしていた桐嶋さんが急に笑い出すから、掴んでいた手を慌てて離す。
それ以上こちらは何とも反応できない中、何を言い出すかと思えば…
「何、横澤、女子社員に嫉妬してんの?」
「ばっ…そんなんじゃ…ねーよ」
否定したいのに、自分でも拍子抜けするほどその言葉で全て説明が付くから、反駁はしりすぼみになって行く。
人気者の君に妬く。
イライラもモヤモヤも、正体はコレ。
「何だ、図星だな?可愛い奴」
「だから可愛いと
か言うんじゃねーって」
「はいはい」
それを見透かされてたまらなく悔しいのに、桐嶋さんがあんまり嬉しそうに笑うから。
今日は、そう言う事にしてやっても良い。
end.
→次は〜桐嶋禅の場合〜
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