お題

□ 寝顔は天使か小悪魔か
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「吉野、起きてるか」


合い鍵を使って勝手に上がり込めるのは担当編集の特権か、恋人の特権か。

タイムフレックスとは言え流石に1日8時間就労という基準があるにはあるが、それをぶっちぎる長時間労働。


真っ直ぐ家に帰れば良いのに、
母性本能のようなものがそれさえも許さない。


「ギリギリ起きてる…」
「床に転がってるのは起きていると言わん」


どうしようもなくだらしないコイツ。
あまりの気の抜けように怒鳴る気力も失せてしまう。


「寝るならベッドに行け」
「めんどくさーい…」
「……」


何も言わずに抱え上げてベッドの上に放り込む。
恋人同士ともなればその顔の近さにドキドキしそうなものだが、吉野はグテッとしたままで。

キングサイズのベッドに沈み込むが早いかスヤスヤと寝息を立て始める。
その寝顔を素直に可愛いと言えれば良いのだが。


「…良い気なもんだな」


口を突いて出た皮肉は本人には届かない。

それでも、安らかな寝顔を眺めていると、
明日の朝飯の下拵えでもしておくか。
あと洗濯もだな。
…と頭の中で段取りが出来上がっていくから不思議で。





寝顔は天使か小悪魔か。

いや、大魔王じゃないのか、こんなに働かせて。


こんなにヘトヘトなのに、千秋の笑顔が見られるのなら、側にいられるのなら、

家事だって何の苦にもならない。


それは千秋限定なんだって、
お前は分かってるのか。




(うわ、うめー!朝飯から贅沢!)(…そうじゃなきゃ困る)

end.


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