お題

□今のままで十分可愛い
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「ただいま、美咲」
「わっ…お、おかえりなさい」


打ち合わせから戻ると、リビングで鈴木さんを抱えていた美咲は不自然なほどの反応を見せた。


「えっと…あのね、ウサギさん」
「なんだ」


鈴木さんをソファに置いた美咲が、コートを脱いでいてまだリビングの入り口にいる俺に近付く。

美咲の百面相はいつ見ても飽きないものがあるが、今回は今までにあまり見た事のない真剣な顔をしていて。


「だから…その…」
「何だ、聞こえない」


俯いた後、意を決したように美咲が顔を上げた…とほぼ同時に訪れた、頬への柔らかい感触。
それが美咲の唇であると分かると同時に、なぜ急にそんな行動に出たのかはわからなかった。


「お仕事、お疲れさまでございました」
「美咲…どうしたんだ?」


ガチゴチに緊張しまくった美咲の顔を覗き込むと、案の定真っ赤だった。


「お、俺、自分が可愛げないの自覚してるし…た、たまにだったら良いかなー……なんて」


あからさまに顔を背けてまくしたてる美咲。


「じゃあ、もっとして」
「そ、そんな簡単にできるかっ!」




今のままで十分可愛い

お前がそう思ってなくても。




けど、今襲えばもっと可愛らしい反応が見られそうだから、


この言葉はもう少し言ってやらない。





fin.

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