お題

□そんな顔もするんだね
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早朝、あと小一時間は寝ていられそうな時間に目が覚めた。
外はようやくうっすら明るくなった、と言う所だろう。
そうか、ここは桐嶋さんの家だった。
それにしても…


嫌な夢を見た…。
政宗が笑いかけて…「やっぱお前が良い」って…。
あり得ねーだろ。

古傷が疼くと言うが、それは何も身体的な傷に限ったことじゃないらしい。

….畜生。


「ヤな夢でも見たか?」
「き、桐嶋さん…アンタ起きてたのか」


横から不意に声が飛んで来てふっと我に返る。


「お前が魘されてたからな」
「悪い…」
「高野の夢か?」


一発で図星を差され、寝起きの頭でどう対処して良いやら分からない。
何も考えたくない。
ただ…苦しい。


「ここで泣くか?」
「いや……」
「遠慮すんな、言ったろ、丸ごと受け止めてやるって」


そう言えば、ちょっと前にそんな事を言われたような気がする。
パッと声の主を振り返ると、からかうでもなく、睨みつけるでもなく、むしろひよに見せるような

おいで、とでも言うようにとてつもなく優しい顔をした桐嶋さんがいた。




あんた…
そんな顔するんだな。
こんな俺に。



「泣く気はない…二度寝させろ」
「寝坊しても起こさないぞ」
「しねーよ、アホ」


ほんの少し、いつもよりちょっとだけ
布団の中で桐嶋さんに身を寄せるようにして


ギリギリまで二度寝した。





fin.
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