お題

□お守り代わりにそっと
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…最近、野分とまともに喋ってねーな。

溜息が零れる。
たった今、また「遅くなります、先に寝てて下さい」とメールが来たのだからそれも当然だ。


「先に寝てるか…」


ふと、スーツを代えようとして机の上に放り出したポケットの中身が目に入る。
迷いなく手が伸びた先は…定期入れ。


中には野分と撮ったプリクラ。
秋彦のくだらねーBL小説のネタにされた数少ないフィクションの部分だったが、
たまたま読んでしまった野分が撮りたいと言って聞かなかったのだ。

それでも秋彦の小説の通り、結局定期入れに落ち着いているプリクラを見ると、複雑な気分にはなるが。


ちゃんと会いたいな…
ちゃんと話して、それで…






「…で?俺は何を考えてるんだ?」


プリクラをベッドに持ち込むなんて、良い年して何やってんだか。
でも、敢えて言い訳をすれば、俺だって恋人と会えない日が続けば寂しいと思わない訳がない…のだから……。


つまり、その…
無事に、ちゃんと野分がここに帰って来ますようにと、


お守り代わりにそっと



プリクラを握りしめて、いつしか俺は眠りについていた。





fin.

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