お題

□年では大勝、恋は完敗
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「は〜肩凝った」

論文が上手くまとまらない。
どうも根拠が薄い。
こう…推測じゃなくて史実たる証拠がないものだろうか。


「あとは…忍ちんだよな…」


家に帰る足取りが重いのはあと一つ、昼間の忍とのメールのやり取りのせいだ。

(今日、夕飯は)
(仕事立て込んでるから適当にする)
(はぁ?よりによって今日かよ)
(おいコラ、仕事なめんなよ)

イライラしていたから、八つ当たり込みで短いやり取りをした。
おまけに何が"よりによって"なのかがサッパリ分からない。

だがアイツも相当不機嫌なハズだ。
今日何度目かも分からない溜息をついて玄関へ、そしてリビングへ。


「ただいま」
「おか…えり……」
「あ?何だ、コレ?」


机の上に並んでいたのはショートケーキとコーヒーカップ。
おそらくコーヒーを淹れるのだろう、お湯を沸かしていた忍がキッと顔を上げる。


「何って…アンタ、今日誕生日なんだろ?」
「ん、あぁ…」


そう言えば、そうだった。
忍に誕生日をわざわざ教えた覚えはないが、だとしたら情報源は理沙子だろう。


「忍、俺もう誕生日がめでたい年でもないんだが…」
「分かってる。俺だってアンタの歳が止まって、俺だけ歳食って、追い付けたら良いとか思う。でもっ……」


何やら言いかけた所でヤカンが耳障りな音を立てる。
コンロの火を消し、コーヒーを淹れながら忍はやっと口を開いた。


「でも、宮城が生まれた事には、ちゃんと感謝したくて」
「……!」



年では大勝、恋は完敗。
先に惚れた方が負けだなんて、真っ赤な嘘だと思った。


「コーヒー冷めるだろ、早く座れよ」
「忍、」
「何だよ、早く…」

「ありがとな」


向かい合わせで座りながら食べるショートケーキは、必要以上に甘ったるかった。



fin.
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髭熊猫さま、リクエストありがとうございました!

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