不器用な2人
□俺だって
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「何やってんだろ…俺」
ふと呟いた言葉は、マンションにしては広すぎる寝室に虚しく響く。
それを自分で聞いたら…何だか寒くなってきた。
淋しいとか、悲しいとか、悔しいとか、どれも全部違う気がするのに
頬を液体が伝う感触がする。
「トリ…」
今までケンカしたって、ここまで落ち込んだ事はなかった。
だけど、ちょっと悪かったと思ってるからかな。
今は確かに、トリに触ってもらいたくて、撫でてもらいたくて、名前…呼んでもらいたくて。
(ネーム見て)
それだけのメールを送り、まだ半分は真っ白な原稿を鞄に入れ、
着替えとか、戸締りとか、したような気はするけど記憶はない程の上の空でフラフラとトリの家まで歩いて行った。
(あ、鍵…ない)
合鍵を忘れたのに気付いたのはドアの前まで来てからで。
でも取りに戻るのも面倒で。
(ま…いっか)
俺はマンションのドアの前で体育座りになって、トリの帰りを待つ事を選んだ。
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