不器用な2人

□恋人ってさ
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「どう言う事だ」
「そう言う事だよっ、俺だって…」


勢い良く啖呵切っておいて尻すぼみになる言葉にまで焦燥を掻き立てられて、

力に任せて布団を剥ぐと、背中を向けて丸まっている吉野がいた。


「吉野!」
「うわ、ちょっ、やめろって」


強引にこちらを向かせ、大きな目が驚きに見開かれている間に口付ける。
吉野がグイグイと押し返して来るけど、体格差にものを言わせて押さえ込む。


「……」
「…っぷは、分かったよ、起きるから!」
「…おい、」


解放するや否や、吉野はすばしっこく腕の間を摺り抜けて洗面所へと走って行った。

もう今日の吉野は何から何まで気に食わない。
文句の一つも言ってやろうと思って、すっかり冷めた食事の前で腕組みをして待ち構えた。


「あのさー、トリ…」


リビングに気配がするなり説教しそうになった俺の耳に、萎縮しまくった、でもハッキリと俺を呼ぶ吉野の声が届いた。


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