遠慮ばっかり
□一周年
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「木佐さん、ちょっと良いですか?」
普段は雪名が俺の家に泊まり込むのだが、今日は雪名の希望で、俺が雪名の家にお邪魔している。
風呂から出ると、ベッドに座っていたらしい雪名が奥から顔を出した。
「な、…何?」
「良いから、座りましょう?」
促されるまま雪名の隣に座ると、雪名はやけに優しい顔をした。
「な、何だよ…何とか言えっ」
「………」
大好きすぎる顔に黙って見つめられ、悪い気はしないが気恥ずかしさが込み上げる。
微笑むばかりで何も言わない雪名に、今一度催促しようと口を開くと、それより先に雪名が呟いた。
「一周年」
「……へ?」
「俺が告白してから、今日で一年なんです」
照れと罪悪感と雪名への想いが鋭い刃になって俺の心に刺さった。
…すっかり、忘れていた。
普通の恋人ってこう言う日に何かするんだっけ。
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