計算づくvs無自覚
□熱中症
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体は丈夫な方だ。
多少の熱なら仕事なんか休まない。
…なのにどうして、
意識が遠のいていく。
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「……ここ、どこ」
真っ白い天井、腕から伸びたチューブ。
病室に、ひとりぼっちだ…。
ガキの頃もそうだったよな。
共働きでろくに顧みられず、熱を出しても氷と薬だけ充てがわれて放置されたっけ。
全てが灰色とはこう言う事だと、文芸のワンフレーズを理解した、捻くれた学生時代。
そうだった……。
「熱中症だそうですよ」
「小野、寺…」
突如視界の外から声が聞こえる。
首を横に向けると、小野寺は俺に背中を向けながら何やらやっていた。
「人の事はグチグチ言うくせに自分の事はできないんですか」
「………」
「6月から熱中症なんて…笑えませんよ」
その声は、心配しているにしては無愛想で、茶化している割には真剣で。
お前、仕事は。
そう聞こうと思った途端、額に氷の冷たい感触がした。
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