実は寂しがりや
□台風の日は
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「あーあ、出掛けらんないな」
「…そうですね」
同居し始めてから初めての台風の日は、2人とも休みで。
俺はいわゆるデートのような事ができるのを少しだけ楽しみにしてたから、ちょっとつまらなくて。
野分はと言うと
「………」
「……野分?」
窓を叩く雨音が強くなって来てからと言うもの、窓際に立って、微動だにしない。
「おい、野分…」
「……」
尋常じゃないものを感じて読みかけの本を閉じ、窓際の野分の顔を覗き込んだ。
「……っ!!」
「あ、ヒロさん?すみません、ぼーっとしてて」
「あ、あぁ…」
何だ、何て顔してんだよ。
怒りのような、悲しみのような、鈍い光を称えた瞳はどこまでも深く…。
ショックだったのは野分を一瞬でも怖い、と思った自分がいた事。
「どうしたんだよ、お前」
「言いません」
「はぁ?」
「言ったらきっと、ヒロさんは俺を嫌いになってしまう」
野分…。
また、自己完結か?
俺だけが何も知らないままそばにいなきゃいけないのか?
「ならねーよ」
「ヒロさん…」
「お前の事は、何でも知りたい」
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