不器用な2人
□側にいる理由
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「やっぱり風呂上りはビールだな」
一人きりの割に珍しくしっかり風呂に入り、少しだけ飲みたくなった。
頭を拭くハズのタオルを首にかけて冷蔵庫を開ける。
トリは仕事で飲みだって言ってたし、この時間で連絡ないし、今日は来ないだろう。
「…ん?」
ビール缶のプルタブを引っ張ると炭酸ガスの抜ける音の他に、何か遠くで物音がした気がした。
まさか、と思うのは前にも一度、酔ったトリが何の前触れもなくウチに来た事があるからだ。
酔ったトリは愚痴でも説教でも良く喋る。
「…やっぱりな」
「吉野、お前……」
「しこたま飲まされやがって…座れよ」
ぐちぐち言われる前に、足元の覚束ないトリをソファに押し込む。
残りを飲んでしまおうとしたら後ろから服の裾を掴まれ、かなりの力で腕の中に引きずりこまれた。
「おい、トリっ…酒臭ぇ、離せったら」
「頭はちゃんと拭け、風邪でも引いたらどうする」
また仕事が遅れて云々…
とぐちぐち言いながらも優しく頭を拭いてくれる。
「なー、酔ってる時まで俺の面倒見なくても…」
「………」
トリも疲れてるだろうに、と気を遣ったつもりなのに、意に反してムッとした顔をされる。
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