不器用な2人

□うたた寝
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「留守番電話サービスに接続します。ピーッという発信音の後に」


接続してくれなくて結構。
誰がどう見ても不機嫌に見えるだろう顔で、携帯の発信を切る。

仕事が早く終わりそうだとメールも電話もしてやったのに返事は一切ない。


「もしかして…」


怒りを通り越して浮かぶのは一抹の不安。
食に頓着がなくヒョロヒョロのせいか、恋人が仕事が一区切りするたびに倒れるのはいつもの事。


携帯に出られる状況にないとしたら…?




「お先に失礼しますっ」
「おー、お疲れ」


新人の不思議そうな顔も、木佐の見透かしたようなニヤニヤも今日は気にならない。

遅刻寸前の学生が学ランを羽織るみたいに、
俺は走りながらコートを羽織って吉野の家に急行した。



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