実は寂しがりや

□悪夢から呼び戻して
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「ヒロさん、ごめんなさい、俺…」


パンッ…!


大の男が力任せに張り倒したから、俺も手が痺れた。
でもこんなの、この苦しさに比べたら…どうってことない。


「っざけんな!」

玄関で、泣きながら喚いてる俺はきっと無様だろう。
無様ついでに全部吐き出してやる。

「遅くなるなら連絡の一つくらいよこしやがれ!
てめぇ1人で生きてると思うんじゃねぇぞ!」
「ヒロさん…」


なんだ、その顔は。
黙って突っ立ってんなよ。
俺の気持ちを何だと思ってやがる。


「ふざけんな、ふざけんなよ。
俺はな…」


やべ、また泣きそう。


「俺が何ともないと思ってんのか」
「ヒロさん、」
「お前が二度と、俺なんかの所に帰って来なかったらって…」


全く。


「どうしてくれんだよ…」
「ごめんなさい」



情けない顔を。
怒り半分、安堵半分で泣きやめない良い年した男を、


どうしてくれんだよ。


「急な応援要請で病院に行ってました」
「理由なんか聞いてねぇよ、今更」
「ごめんなさい…」


背の高い野分の抱擁はいとも簡単に俺を包み込んで。
あんなに苦しかったのに、もう悪夢がどうでも良く思えて。


ただ、

「お帰り、なさい…」
「ただいまです、ヒロさん」


帰って来てくれてありがとう。




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