実は寂しがりや
□悪夢から呼び戻して
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「野分っ!」
ガバっと起き上がると、周りには暖かくも寂しい夕日の色。
嫌な…夢だったな。
でも結構リアルだったな…
一生現実になって欲しくないな。
「今…何時だ?」
時計を確認すると、5時。
確か野分は5時半には帰ってきて、10時から夜勤…だったか。
夕飯でも作って待っててやろう。
料理で旦那を繋ぎ留めたい奥さんみたいに、妙に気合が入る。
…ぜーんぶ、あの変な夢のせいだ。
ー*ー*ー*ー*ー
「8時」
料理が冷めてもまだ野分は帰って来ない。
電話もメールもない。
玄関であの野郎、と毒付いていられたのも1時間前までだ。
今は座ったまま動く気力もなく、ななかなか振り払えない不安と戦っている。
アレが正夢だったら。
明日の昼くらいに突然来たりとかしたら。
どうしよう。
嫌だなぁ、怖いなぁ、
パタッ…パタッ…
水滴がテーブルへと落ちる。
こらこら、どうした自分。
冷静になれ。
授業中みたいに、ほら、クールに…。
…頭では思っても、涙を止めるのは案外難しいみたいで。
「野分…っ」
苦しい。
心臓の近くが、ぐっと…。
「ヒロさん!」
野分だ…
フラフラと立ち上がって、野分のいる玄関へ…。
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