異なる世界

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次の日、小鳩は米花公園に来ていた。
小鳩の周りにはコナンを除く、子供達元太、光彦、歩美が集まっている。
立ち止まったまま、話す三人を見ていた小鳩は遠くから掛けてくる足音に気がついた。
足音の聞こえる方に視線を向ければ、その足音は小鳩達の方に近づいている。
近くまで来た足音に元太達もその方に顔を向け、その人物に元太は顔を顰めた。

「―ったく、遅せーぞコナン!!」
「ごめんごめん…蘭ねえちゃんをごまかすのにてまどっちゃって…」

最後にやって来たコナンは走ってきたのか乱れた息を整えていた。
昨日に言っていた宝探しの為、子供達はこの米花公園に集合するよう約束していたのだ。

「おまえらもちゃんと親に内緒で来たんだろーな?」
「うん!」
「うん」

笑顔で頷く歩美に合わせるように小鳩も頷く。
零には子供達と遊んでくると言っただけで、詳しくは言っていない。
気をつけて遊ぶんだぞ、と零は言っただけで怪しまれることはなかった。

「当然ですよ…。なんだってボク達の目的はこの暗号に記されてる宝を探すこと。親に知れたら没収されかねませんからね…」

光彦は手に持つ宝の行方を示す暗号が書かれた紙を見、笑顔で告げる。
前回、お化け退治だと言って事件に関わっていたのだ、親も心配するであろう。
好奇心旺盛の子供ほど何をするかわからないものだ。
笑顔を浮かべる元太と光彦、歩美を見、小鳩は小さくため息を吐いた。

「よーしみんな!持ってきた物を出してみろ!!」

元太の言葉に小鳩は困った。
またしてもコナン以外が荷物を漁る中、小鳩はポケットに視線を向ける。
今日も携帯は持ってきているが、これは使い道がなさそうだけど…。

「オレは宝を掘りおこす、スコップとクマ手!!」
「わたしは遠くが見えるオペラグラス!!」
「ボクは地図帳とコンパスと…筆記用具を一式…」

それぞれが持ってきた物を披露し、視線が小鳩に移される。
仕方なく携帯を手のひらに乗せる。

「前回と同じだよ。使い道ないから持ってきてない同然だけど…」
「いえ!そんなことありませんよ!」

声を上げた光彦に小鳩は目を見開く。
彼はハッとしたように頬を赤くさせ、携帯電話も重要な役割がありますよ…、とボソボソと声窄みに 庇ってくれたのだ。
目を泳がせる光彦に小鳩は目を細め、庇ってくれてと意味を込めお礼を言えば彼は更に赤面させ俯いてしまった。
その姿に小鳩は首を傾げ、携帯をポケットに戻す。
そして皆の視線はコナンへと移される。
前回と同じよう何かを出す仕草をしない彼に歩美はワクワクしながら聞く。

「コナン君は!?」
「ボクはコレだよコレ…」

そう言って指差す先には自身の頭。
察した小鳩はなるほど、と小さく頷く。
分かっていないのか元太はコナンに近づき、コナンの被っていた帽子を取った。

「なんだ?この帽子になんかあんのか?」
「頭だよ頭…」

帽子になにかあるのかとしめしめ見ている元太から帽子を取り、怒りを隠しながら笑顔を浮かべたコナンは帽子を被り直す。

「なんだ…君はまた何も持って来てないんですか?」
「だ、だから頭を…」
「しゃーねーな…じゃーオメーは…」

呆れながらにコナンに視線を送る光彦と元太。
元太は自分の持っていた物、そして歩美と光彦の持っていた物をリュックに詰めるとそれをコナンに押し付けた。

「みんなの荷物持ちだ!!」

え〜と文句を言いながらも、受け取ってしまったリュックにコナンは不満げに子供達を見るが助ける者はだけもおらず、渋々皆の荷物が入ったリュックを背負った。
不満げにしているコナンなど知らぬ存ぜぬと元太の出発だーとの言葉に元気よく返事し、歩き出す三人だが、

「どこに…?」
「さ、さあ…」

立ち止まった三人に隣りにいたコナンがずっこけかけた。

「そんなのオレが知るか!?じゃーオメーは知ってんのかよ、光彦!?」
「そ、そんな…」

光彦の胸ぐらを掴み、理不尽に怒る元太に光彦と歩美は慌てて元太を静めようとしている間、コナンの手に渡った暗号の紙を小鳩は覗き込む。
じっくり見ることの出来た紙には、絵と言うよりは図形のような形のものが縦に並ぶそうに書かれていた。
見た感じでは理解できそうにない。
同じく暗号を見ていたコナンは、あ、と声を漏らすと喧嘩をしている子供達に呼びかけた。

「おいおい、まてよ…この暗号見てみろよ!」

暗号との言葉で怒りを沈めた元太はコナンに歩み寄り、ホッと安堵の息をついた光彦と歩美もコナンに近寄る。
暗号の紙を皆に見えるようにしたコナンは、暗号の書かれた一番上の図形を指差した。

「一番上に描いてあるこの図形…どこかで見たことあるだろ?」

コナンの言葉に紙を取った元太、同じように紙を見る歩美と光彦はその図形を見、考える。

「ほら、昨日ボク達がその暗号を手に入れた場所…」

そこまで言えば子供達はわかったのだろう。
あーっ!、と思い出したように叫んだ三人に小鳩も同じく思い出していた。
一番上の図形はタワーのような図形をしている。
早速昨日行った東京タワーに向かうためにバス停に走り出した三人にコナンと小鳩は後を追うように走り出す。
走っている時だ、ふとコナンがなあ、と声を上げ小鳩に視線を向けた。

「蘭ねえちゃんが君から話があるって聞いたんだけど。ボクに何か用?」

小鳩はキョトンと目を瞬かせる。
走っていた足を緩めれば、コナンも合わせるように足を緩めた。
蘭が手助けすると言っていたが、こういう事か、と小鳩は小さく息をついた。

「聞いてみたい事があって…。貴方の持つ不思議な道具の事」
「ふ、不思議な道具って何のこと…?」

あからさまに顔を引き攣らせ、恍けるコナンに逃しはしないとばかりに小鳩は目を細めた。

「貴方が転校してきた初日、江戸川くんが蹴ったボールは木を倒した。子供が大きな木を倒すなんて無理な話」
「……」
「蹴ったボールは電気が走っていた。それってその靴に何かしらの機能がついている」

そういうことで合ってる?、とずっと同じ赤いスニーカーの靴を履いているコナンの靴から視線を上げ、首を傾げれば真剣な顔で小鳩を見ていたコナンは目を見開き、はぁーと深く溜め息を吐いた。

「見ていたのかよ。そうだよ、これはキック力増強シューズ」

靴の側面にスイッチが合って、それを押すと電気・磁力によって足のツボを刺激し、筋力を高めることができるのだそうだ。
知人に科学者の博士がおり、その人に作ってもらったみたい。
因みに初日に木を倒したのは初めて使用したので加減がわからなかったらしい。

「そう。興味深いね…」
「なんだ?機械が好きなのか?」
「そういうわけじゃないよ」

奇妙な物を見る目でコナンが見てくるものだから否定しといた。
機械を触れる機会があまりなかったものだから気になるだけだ。
それにこの世界にまるでアリスのような能力を見てしまっては気になってしまうのは仕方ないと思う。
こんな事を表に言わるわけなく、心の中に留める。
聞きたいのはそれだけだとコナンに告げ、遠くにある三人の子供を追うべく走り出す。
後ろからはあ?、と呆れたような声を上げたコナンが慌てて掛けてくる足音に小鳩は小さく口角を上げた。

本当、江戸川くんって変わった子供だな…。


―――…


東京タワー前に行くバスに無事乗ることが出来た小鳩達。
バスの一番後ろの席に座ることが出来たので5人並んで座っていた。
発進したバスに、窓際に座った小鳩は流れる景色に視線を向けていた。

「オレも最初から東都タワーがくさいと思ってたぜ…」
「もう宝を見つけたも同然ですね!」

コナンのお陰で気がついたんだろう小嶋くん…

笑顔で話す3人に小鳩の隣に座っていたコナンが乾いた笑いを漏らしていた。

「でもこの文字なんだろ?OROって書いてあるけど…」

暗号の紙は歩美の手に渡っており、彼女の疑問に子供達は考える。
OROと言われても小鳩には思い当たる単語はない。

「ORO、オロチ…?」

元太が解読しようとするが、それはきっと違うだろう。
歩美がコナンにわかるか訪ねたが、彼は曖昧に答えた。

「何かを略した言葉かなー…?」
「!そ、そうか!わかりましたよ!!」

コナンの言葉で閃いたのか光彦が得意気に笑った。

「最初のOは、大きいのO!RはリッチのR!そして最後のOは、お宝のO!つまりこれは…“大きくてリッチなお宝”を略した文字なんですよ!!」
「すっごーい光彦君!!英語が読めるのねー!!」

歩美に褒め上げられ光彦が照れている。
確かに小学一年生が英語を読める事は凄いことだと思う。
この世界の勉学がどこまで進んでいるのかよくわかっていないが…
しかしRだけ英語略というのは無いだろう。
そう思うのだが、コナン以外の三人は暗号の先には宝があると信じており、想像を膨らましているのか瞳がキラキラ輝いている。

「おーし、オレ、その宝で世界中のうな集食べまくるぞー!!」
「わたし、世界百週旅行しちゃうー♡」
「じゃーボクは、NASAからスペースシャトルを買って、宇宙へ…」

小さい夢から大きすぎる夢を考えてる子供達に小鳩は小さく苦笑い。
コナン君と柚木さんは?と歩美に聞かれ考えてみる。
大金を手にしたとしても欲している物や、やりたい事など思いつかない。

「私は家の人に渡すか貯金かな…」
「ボクも貯金かな?」

零に預けるか、彼の元を去る時用に貯金することだろう。
現実的な考えはコナンも同じようで、元太に夢ねーなと言われ2人して苦笑を浮かべた。


―――…
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