異なる世界

□プロローグ
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何時からこの場所にいたのか…そんなものはもうとっくの前に忘れてしまった。



薄暗いこの小さな空間は一人の人物を閉じ込めるためだけに存在し、決して逃げ出すことは許されない。
その場所に幽閉された女性…と言ってもまだ幼さを残した女性はただ時間が過ぎ去るのだけを待つかのように床に伏せていた。

力なく伏せるその身体中は傷まみれで、真新しい傷なのか所々血が滲んで服を赤黒く染めてる。
微かに開かれている瞳には光など宿っていなかった。

「……っ…、」

掠れた唇から漏れるのは痛みに耐える声だけ。


自由になりたい、そう思い数時間前、長年思い描いていた脱走計画を実行した。
監禁部屋を抜け出し、学園の敷地内を駆け回り、ようやく巡りついた外との繋がりを絶つかのようにそびえ立つ高い塀。
この塀さえ乗り越えれな学園から抜け出せる。
…そう思ったのにだ、学園の奴らはまるでそれを見抜いていたかのように背後に現れ……

そしてまた逆戻り。
罰だと身体中を痛めつけられ、容赦なく“アリス”を女性目掛けて使ったのだ。
当然手足は少し動かそうとすれば痛みが走り、動かすことなど出来ない。


死にたい、楽になりたい、……この学園から開放されたい…

ただ頭に巡るのはその事ばかり。
楽しい思い出などちっとも浮かんでなど来なかった。
思い出そうとすれば、崩壊する建物、血にまみれた人達。嘲笑う学園の教師……目の前で自分を庇い血に染まった両親。

虚ろの瞳から光るものが一雫、頬を伝い落ちていく。


「……に、た…い……しに、たい……じゆ…に……い……

……たす、けて……」

女性から出た掠れた声に反応するように首にかかっていた翡翠色のしずく型のネックレスが光輝く。

女性は光に気づかず気を失い、光を増すネックレスは女性を霞ませ……その場から居なくなった。
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