□日はまた昇る1
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「あれ、今日はシーの奴非番なんスか?」

普段通り雷影の執務室に来たダルイが開口一番に言ったのはその言葉だった。
キョロキョロと相方の姿を探すも、部屋にはいないらしい。
サンドバッグやトレーニング器具が部屋の隅に置かれ、中央には黒い革張りのソファがある。
その奥には雷影が使っている木製の古い机。
三代目がまだ健在だった頃もそこにあった気がする。
自分はまだガキだったのであまり覚えてはいないが。
それだけこの机は年代物だった。
部屋は壁の一面がガラス張りになっており、里の全景が見渡せた。
何と言ってもここはこの国で一番高い建物だ。
空を覆う群雲が靄のように漂い、時々隙間から綺麗な青空が覗いていた。
━いつ見てもここは曇りだな。
微かに目を細め、雲が影を落としている里の街並みを眺めた。
書類をめくっていたマブイが顔を上げ、こちらの質問に答える。

「ええ、長期任務に行ってるわ。内容は重要文書の配達。」
「へぇ・・・。」

その言葉ですぐに腑に落ちた。
それなら合点がいく。
こういう事は別に珍しくもなくよくある事なのだ。
上忍であり雷影直轄の側近である自分達は、ランクの高い長期に渡る任務を頻繁に受け持つ身だった。
二人で任務に赴く事もあれば、単身で遠方を飛び回る事もある。
今日も上からの命令でシーは出掛けて行ったのだろう。

「そう言えば・・・」
「?」

マブイが何かを言い掛ける。
が、途中で言葉を切ると微笑んで首を振った。
気のせいかどこかぎこちない笑みを浮かべているようにも見えた。

「マブイさん?」
「何でもない。とりあえずこれ今日の分ね。」

はい、と手渡された書類の束に思わずげんなりと肩を落とした。
普段の二倍はある量だ。
どちらかが任務で不在だと、決まってそのツケがもう一方に回ってきてしまう。
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