□日はまた昇る0.5
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今日で七日目だ。
朦朧とする意識の中でボンヤリとそんな事を考えていた。
最後に日を見たのはいつだったか。
もうそれすらも過去の記憶のように思えた。
口の中を舐めてみる。
鉄のような血の味と嫌な味。
殴られた時に口を切っていたらしい。
すぐにでも歯を磨きたい気持ちに駆られるものの、それが無理だと言う事も分かっていた。
何せ今の自分はベッド(寝心地はとてもじゃないが良いとは言えない)に手足と胴体を縛り付けられた格好になっているのだから。
それは自尊心の強い自分にとって「恥辱」以外の何物でもない。
捕虜になったのだから当然の待遇だと言う事は分かっている。
だがそれにしても。
━くそ。
心の中で悪態をつき、歯痒さに歯を食い縛る。
手足の自由を奪われている為、印を結ぶ事も出来なければまともに抵抗する事すら出来ない。
幸いチャクラはまだかろうじて温存しているものの、この状況では一切役には立たないだろう。
そもそもそれすら無駄な行動だった。
身を振り解こうとする試みは最初から諦めていた。
今はただ目を閉じ、周りの気配に意識を集中させる事だけに専念する。
あの連中がまた来るのではないかと意識の隅で様子を窺っていた。
全身の肌の神経が研ぎ澄まされ、今か今かとその時が来るのを待ち構える。
こういう危機に陥ると、決まって自分の感知能力は普段の何倍も鋭くなるようだ。
部屋の静けさすら今のシーにはうるさい雑音に思えてくる。
耳が痛い程の静寂に耳を塞ぎたくなったが、それすらも出来ない。
それが余計にもどかしい。

頭の向きを変え、汚れたシーツに顔を擦り付けた。
汗を掻いている。
部屋は暑く、ムッとした空気で息が詰まりそうだ。
着ている黒いアンダーの裾がめくり上がり、体の下で皺になっていた。
下には何も穿いておらず、白い脚が剥き出しになっている。
恐怖は感じていない。
自分でも驚く程頭は冷静だった。
が、その反面で頭に浮かぶ考えに苦しんでもいた。
これから起こる事。
自分のこれからの処遇。
いくら考えを振り払おうと努めても、不愉快な想像ばかりが頭をもたげてくる。
恐らく今日も同じ事を強要されるのだろう。
そう思うだけで舌を噛んで死んでしまいたくなった。
それでもそれを実行していないのは、心の隅で確信しているからに他ならない。
あと幾日かすれば里が必ずここを探し当てる筈だ、と。
後もう少しの辛抱だ。
それまでは絶対に屈しない。
否、例え居場所が分からず助けが来ずとも死ぬまで連中に抗い続けるつもりだった。
里の命令は絶対だ。
何をされようと、一言一句彼らに里の情報は漏らさない。
後少し、後少し。
キュ、と口を引き締めて唇を噛み締めた。
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