□彼の一面
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蛍光灯の光に照らされた手術室は無機質な印象を与えていた。
開け放したドアの前で立ち止まり、ダルイは部屋の中を覗いた。
案の定視界に相方の姿を見つけ、その様子をじっと眺める。
後ろでやや伸びてきた金髪を結んでいるせいで一瞬誰だか分からなかった。
額当ても邪魔になるのか取ってしまっている。
真面目な彼の事だ。
「手術で細やかな作業をするのに髪が鬱陶しくなるから」とかいう理由でそうしているのだろう。
彼がこちらに背中を向けた。
白いうなじが目に入り、黒いアンダーの襟口がよりその白さを際立たせていた。

てきぱきと動き回る相方の姿を黙って見守りながら、じっくりと部屋を観察する。
部屋中に棚が置かれ、薬品の入った瓶が中に仕舞われている。
窓のない部屋は密室特有の微かな窮屈感を感じさせた。
中央に置かれた手術台には所々に点々と血が飛び散っており、先程まで行われていた手術の名残がまだ残っていた。
大掛かりな手術だったようだ。
シーがこの部屋にいるのを見たのは初めてだった。
今は彼がこの場所を指揮っているらしい。
部屋を見回しながらダルイは懐かしさにも似た感情を覚えた。
ここに来たのは初めてという訳ではない。
ダルイ自身も重症を負った時はいつもここに運び込まれていたものだ。
あの頃の自分はまだ若造で、まだまだ無鉄砲な所があったように思う。
━懐かしいねぇ。
最近はある程度気を付けている為、ここに来る事はめっきりなくなっている。
自分もいくらか成長したという事か。

ゆっくり部屋に入り、傍にあるスツールに腰掛けて肘を突いた。
やがて口を開く。

「済んだのか。」

ダルイの問い掛けにシーが動きを止めた。
が、振り返る事はしない。
別にこれはいつもの事だ。
顔を見なくても彼にはチャクラで誰がいるのかすぐに分かってしまう。
カチャカチャと医療器具を整理しながら彼が答えた。

「まあな。後は安静にしてれば問題ないだろう。」
「重症だったんだっけか。」
「ああ。」
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