□距離感
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昔は自分の方が強いと感じる事が多かった。
が、今ではオモイの方が確実にカルイより強くなっている。
守ってもらう立場だった弟が、いつのまにか自分より頼れる存在に変わったのだ。

恐らくこれは自分の姉としての感情なのだと思う。
弟が姉離れしていく寂しさと言ってもいい。
そう言う風に考える自分が子供のようで嫌だったけれど、それでも寂しさは拭えなかった。
それだけオモイは自分にとって大きな存在だったのだろう。
双子の片割れで弟。
そして血の繋がった家族。
一緒にふざけることもあるし、お互いをいさめ合うこともある。
そして何となく距離を感じてしまう時もある。
その度に自分はどこか歯がゆい気持ちになってしまうのだ。

* * *

日が傾きかかっている。
オレンジ色に染まった空が目に眩しい。
荒れ果てた高原を突っ切る細い道を、二人で踏み締めて辿って行く。
目の前を歩くオモイの後ろ姿を見つめた。
短く切った白髪が夕陽に照らされ、空と同じようにオレンジ色に染まっている。
眩しいと感じて思わず目を細め、顔に手をかざす。
かざした指の間から光が漏れて見えた。
眩しく、そして遠い。
自分の片割れが、こことは違うどこか遠い場所を歩いているような錯覚がした。
オモイは自分より一二歩先をゆっくりと歩いている。
ゆっくりと言っても、こちらからすれば付いて行くのがやっとの速さだ。
歩幅の大きさの違いもあるのかも知れない。
どうやら体格でも体力でも自分は彼に負けてしまっているらしい。
それで無性に腹が立ってくる。
冗談で背中に拳骨を入れてやろうかと思ったものの、結局やめた。
今は口喧嘩をするだけの気力が残っていないし、後々面倒になるからだ。
代わりに黙って弟の背中を見つめる。
昔と比べると一回り程大きくなったように思う。
成長期で体がどんどん発達しているのだろう。
二人並ぶとカルイのガリガリに痩せた体が際立った。
背中に刀を差して歩く彼はもう、かつての小さかった弱虫だとは思えなかった。
本当に彼は大きくなった。

━・・・それに比べて、ウチは。
自分の平らな胸を見下ろす。
自分達二人の隊長であるサムイと比べると、本当に小さな胸だった。
━いや、あの人は特別級なんだけどさ。
里で一二を争うスタイルの良さを誇る彼女と、自分の体型を比べる事自体が第一間違っている。
比べる土台がそもそも違うのだ。
━でもやっぱ貧乳だよな・・・ウチって。
ハァ、と溜息を漏らす。
これで一体何度目だろうか。
自分らしくないと思った。
いつもなら「女らしくない」と言われようが「男女」と罵られようが気にも掛けないのだが。
今日はどこかナイーブな気分だった。
疲れているのかも知れない。
何せ今日は一日中任務で戦闘続きだったのだ。
帰って早くシャワーが浴びたかった。
早く里に帰ってサムイやビーの顔が見たい。
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