□通りすがりの15
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+前半過去話。
+シーが19歳位

「金出したら相手してくれるって聞いたんだけど、本当か?」

目の前に男性が立ちはだかり、ドアを塞ぐように立っていた。
肌の黒い長身の男性だ。
自分よりも幾らか年上の、それでもまだ若い忍のようだ。
じっとこちらの顔に視線を注ぎ、忍服から覗く白い肌を吟味するかのように眺めてくる。
あの値踏みでもするような、不躾な瞳。
這い回るような、舐め回すような視線。
ごくりと唾を飲む音が聞こえた。
だが少し自信に欠いた男らしい。
ぎこちなく頻りにキョロキョロと周囲を探っている。
見られてはいないか?
聞かれてはいないか?
そんな声がありありと聞こえてくるような行動だった。
どこか怯えている様子すら窺えた。
相手を買う事すら初めてなのかも知れない。
男相手なのだから当たり前だろうが。
じっと黙って相手を見つめたまま、シーはただこう思った。
滑稽だ、と。

「上司からちょこっと聞いたんだ。金と引き替えに抱かせてくれる奴がいるって。」

オ前ハ白人ナンダ。
誰ニデモ平気デ腰ヲ振ルアバズレナンダ。
脳裏に声が響く。
誰の物でもない、幻聴のような声。

「それってあんたの事だろ?」

女ミタイナ顔ダナ。
細ッコイ体ダナ。
女ミタイニ色白ノ肌ヲシテヤガル。
ドンナ味ガスルノダロウ。
味ワッテミタイ。

「相手が欲しいんだ。今夜。」

男性が途切れ途切れに話す。
緊張しているのだろう。
暫く決まり悪そうに口を開けたり閉じたりしていたが、やがて意思が決まったらしい。
真っ直ぐこちらの顔を見据えて言い切った。

「来てくれるな?」

するりと彼の手が伸び、こちらの手首を掴む。
おもむろにもう片方の手がシーの腰を撫でる。
弄るような、撫で回すような。
思わずそれにビクリと肩を震わせた。
獲物を捕えたハイエナのような目。
純朴そうな瞳には若者らしい欲情が浮かんでいる。

「なあ。」

いいよな?
男性が囁き掛ける。
それと同時に体に相手の股間が押し付けられた。
有無を言わせない問い掛け。
自分に拒否権はない。
この顔と、この肌が全てを物語っている。
決定権は彼にあるのだと。

「――分かりました。」

気付いた時にはもうそう答えていた。

・ ・ ・

電気の消された暗い部屋。
窓のカーテンは閉め切られている。
見られる事を恐れているのだろう。
そこまで用心深くならなくてもいいだろうに。
気になるならやめればいい。
が、こちらが思っていた以上に男性は昂っていたようだ。
部屋に入った瞬間に壁に背中を押し付けられ、唇を奪われた。
舐めるように口内を舌で弄られ、微かに身動ぐ。
吸い付くような音と、濡れた声。
昂った体が発散する熱すらも、媚薬のようにシーを侵していく。
その間も男性の手がこちらの体を弄る。
忍服越しに胸を、腹を、脇腹を撫でられていく。
その動作一つ一つが与えてくる、鈍く何とも言えない感覚に、不覚にも下肢に熱が灯り始めた。
じわじわとこちらの体も男性の愛撫に反応し始めている。
想像していたよりも相手の愛撫は優しいものだった。
思わず錯覚してしまいそうになる。
想われているのだ、と。
そんな事、絶対にある筈がないのに。

やがて腰に手が移り、ズボンの前がはだけられるのが分かった。
そして手が中へと入れられていく。
無防備な中心の素肌に直に手が触れ、思わず目を瞑る。

「っ。」

普段晒さないその場所は特に敏感な箇所なのだ。
もう何度も経験している筈だと言うのに、未だに体が強張ってしまう。
くすり、と笑う音がする。
男性だ。
そのまま彼は手を先に進め、ついに張り詰めていた中心に触れた。
さっきの愛撫と同じ位優しく、彼の手がこちらの性器を握る。
ビクリと反射的に肩が震え、声が出る。

「っ、あ・・・っ。」
「・・お前、もう勃ってるんだな。」
「あ、っう、っ・・・。」

絡め合わせるように指を性器に擦り合わせられる。
纏わり付くようなねっとりとした快楽。
それが下肢を通して、全身に広がっていく。
膝が震え、今にも崩れ落ちそうだ。
こちらの様子に気付いたらしく、男性が囁くのが聞こえた。

「場所、移るぞ。」

・ ・ ・

床には脱がされた忍服が一面に散らばっている。
ベッドがギシリとスプリングの音を立てた。

「あっ・・は、っ、あ、う。」

皺苦茶に乱れたシーツの上で、悩ましげに腰をうねらす。
相手がさらにその気になれるように。
奥を貫かれる度にぴんと背中を反り返らせる姿は、犯されている女そのもので。
そんな嬌態を晒している自分の光景を思い浮かべるだけで、体がさらに熱を持つ。
下半身はしっかりと熱を咥え込んでいた。
男性の熱い塊。
それが自分の中にある。
自分は犯されている。
この男性に。
そう思っただけで下肢に集まる熱がじわじわとこちらの性器を勃たせていく。
こちらの首筋に顔を埋めていた男性が、微かに呻き声を漏らした。
快楽と恍惚の混じった息のような声。

「・・・っ、凄い、中、柔らかいな。」
「っ。」
「・・今まで、何人と寝た?」

何人と寝たか?
そんなのいちいち数える訳がない。
思い出したくもない。

「なあ、何人と寝た?俺以外の相手にも、こうやって腰振ってるのか?」
「っ、あ、うっ・・ちが、」
「じゃあ何で、こんなに柔らかいんだろな。」

ぐり、と奥を擦られる。
ひくりと喉が鳴り、厭らしげに下半身をくねらせた。

「や、ぁっ、ああ、あっ。」
「しっかり開発されてるんじゃないか。いやらしい体だな。」

男性の生温かい舌がこちらの耳をなぞり、舐めていく。
小刻みに体を震わせてシーは刺激に耐えた。
早く、早く。
早く終われ。
ひたすらそう願った。
こんな事、したくない。
本当はしたくない。
したくないと言うのに。
掌に痕が付く位にぎゅっとシーツを握り締めた。
涙が一筋、頬をゆっくりと伝い落ちて行った。
━また今日も、こんな――――。

暗転。
視界が途切れた。
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