□通りすがりの8
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広めの部屋に二組になって向かい合う。
一方は自分とホヘト。
正座をして畳の上に座っている。
そしてもう一方はシーとオモイだ。
シーは自分達と同じようにきちんと正座をしている。
オモイは脚を崩し、胡坐を掻いて座っていた。
足が痺れるからだろう。
あまりこう言う和室には慣れていないのかも知れない。
どこか緊張した面持ちだ。
が、この間ここに来た時よりも幾分リラックスしているように見える。
隣に先輩がいる為だろう。
現に彼は無邪気な笑顔を浮かべながら時々シーを見上げている。
シーも同じく落ち着いているように見える。
同じ里の後輩の存在にホッとしているらしい。
思えば彼は恐らく、この十数日間の間は木ノ葉の忍としか顔を合わせていない筈だ。
安堵を覚えるのも無理はない。
ホヘトが口を開いた。

「・・と言う事は、貴方がオモイの先輩だったんですね。」
「俺は彼の先輩の、ほんの一部の人間に過ぎません。
 俺以外にもオモイに影響を与えてる大人は沢山いますから。」
「んな事ないっスよ。シーさんから学んだ事、一杯ありますし。」
「そうか?」

首を傾げるシーにこくりとオモイが頷く。
ホヘトが微笑む。

「オモイは戦争中に、俺の一族の人間を助けてくれたんです。そして、ザジの親友になってくれた。」

彼がこちらに目を向ける。
そしてシーに視線を戻した。

「そして、貴方は彼の先輩だ。ザジも貴方を慕ってる。」

一旦間を置き、再びホヘトが話し出した。

「・・貴方はきっと、信用出来る人だ。俺は貴方を、オモイの先輩として受け入れたい。」
「・・・。」
「だから、どうか俺達を信用して下さい。俺達は確かに・・
 まだ貴方方の里がした事を許してはいない。けれど、個人としての話なら別だ。」
「ホヘトさん・・。」

うっすらと笑みを浮かべて彼が言った。

「オモイと貴方は、信用出来る。今日貴方を見て、すぐにそう思いましたよ。
 身を投げ売ってザジ達を守ろうとしていた。並大抵の奴ならそう簡単に出来ません。」
「俺はただ・・先輩として当然の事をしただけで。」
「だからこそ、です。貴方にならザジを頼んでも大丈夫でしょうね。」
「あれ、ホヘトさん、俺がシーさんと会ってたの知ってたんですか?」

こちらに顔を向け、秘密めいたように彼が言った。

「ああ、実はトクマから話を聞いてな。俺が実際にこの人と話をしてみよう、と言う事になってたのさ。」
「そうだったんだ・・・。」
「何、確かめたくてな。後輩が懐いた雲の先輩とは一体どんな人なのかと。」
「・・・。」

と、襖の向こうから足音が聞こえてきた。
シーと共に襖を振り返る。
二人分のチャクラ。
見知ったチャクラだ。
シーもチャクラを感知したのだろう。
じっと襖を見つめている。
そして。

「お、話し合いの真っ最中だったんですか。お茶持って来ましたよ。」

襖が開き、トクマがひょっこりと顔を出した。
手には急須と茶器を載せた盆を持っている。
その後ろにはコウの顔も見えた。
思わず声を上げる。

「トクマさん、コウさんまで。」
「俺が前もって伝えておいたんだ。」
「さすがホヘトさんっスね・・・。」
「いやぁ、ホヘトさんの用意周到さにはいつも驚かされますよ。さすが我らが大黒柱ですね。」
「トクマ、早く部屋に入れ。俺が入れないだろう。」

朗らかに冗談を飛ばすトクマにコウがいつもの仏頂面で釘を刺す。
普段と変わらない、いつもの彼らの会話だった。
一気に部屋の中が団欒とした雰囲気になる。
無意識に頬が綻び、笑みがこぼれた。
この他愛もない先輩達のやり取りが、何よりも一番好きだ。
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