□日はまた昇る17.5
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シーが目覚めて感知能力が戻ってから皆と交わした会話


病院にて

青:劇的な回復ぶりだな。

病室の一室。
シーは医療用ベッドに身を横たえている。
腕には検診用のパット。
パットからはコードが伸び、医療器機へと繋がっている。
背中にシーツの感触を感じる。
病院のベッドシーツは柔らかい。

ベッド越しに黒い瞳を青に向け、続いてパットに、そして今度は天井に目を向ける。
目を閉じて小さく鼻孔から息を吸い、そして吐き出す。
ゆっくりと目を開ける。

シー:今日で、最後の診察になるんですね。
青:そう言う事になるな。感知能力も元に戻った。今のお前は健康そのものだよ。

カタリとクリップボードを置く音。
シーはと言うと、シーツに身を委ねながら昨夜の事を思い出していた。
ダルイの大きな褐色の手。
白い肌の上を滑っていく彼の指と、生温かい舌。
喘ぎ声。
吐息。
快楽。
そして何度も迎えた絶頂と、彼の熱。
思わず顔が熱くなり、咄嗟に顔を腕で隠した。

青:もうこれでいいだろう。

青がシーの腕からパットを外す。
促すように彼が目配せする。
その合図の意味をシーは分かっている。
ベッドから上体を起こし、来ていた黒のタンクトップを捲り上げていく。
腰、背中、胸、首筋。
括れたしなやかなシルエット。
白い肌が晒け出され、タンクトップがシーツの上にパサリと落ちる。
剥き出しになった白い肢体。
所々にうっすらと痣が残った細身の体。
それでも白い肌の傷は大方癒え掛けていた。
青の手が、シーの肩や腕を確かめるように触れていく。
撫で回すでもなく、弄るでもない。
何のやましさも下心も感じさせない、事務的な手付き。
その行為に言いようもない安心感を感じる事が出来た。

青:傷もだいぶ引いてきたようだ。
シー:痣はもう少し時間が掛かりそうです。
青:痛む所は?
シー:ありません。

会話を交わしながら触診は続く。
と、唐突に彼が口を開く。

青:昨日は、ダルイと会っていたんだろう?
シー:(驚いて青を見つめ返す。目に動揺の色を浮かべて。)
青:長年生きて経験を積んでいると、それなりに勘が鋭くなるんだ。それに、お前達二人の事だ。何となく察しは付いていた。
シー:(尚もじっと相手を見つめる。)

それきり青は何も言わない。
しばらくシーの体を触れて容態を調べた後、服を着ていいと言う。
タンクトップに腕を通し、シーはゆっくりとベッドから立ち上がる。
その様子を青が見守っている。
そして黙って二人で向き合う。
灰色の彼の目には温かい光が宿っている。

青:お前は本当・・強い光の持ち主だな。何があっても目を曇らさなかった。
シー:貴方の教えですよ。『その目を曇らせるな』。貴方はそう俺に言ってくれた。
青:シー・・・。

暫し沈黙。
そして篤い抱擁がシーを包む。
自分よりも幾分広い胸に、肩に、シーの体はすっぽりと収まった。
何度も彼の手がこちらの金髪を、柔らかい髪を撫でていく。
本当の息子にするように。
内心でシーは確信した。
自分が求めていたのは、こう言う温もりを与えてくれる年上の男性だったのだと。
無償の温もりを与えてくれる存在に、自分はずっと憧れていたのだ。
そして裏切られ続けて。
ようやく自分はその存在に巡り合えたのだ。
目を閉じて静かに涙を流した。
青の与えてくれる温もりの一つ一つが、身に、心に染みていく。
ダルイの時とはまた異なる安堵感。
親に包まれているような温もりを、安らぎを、ただ黙って受け止める。
やがて彼が体を離し、シーも相手を見上げた。

シー:ありがとうございます、青さん。
青:(黙ってシーを見つめている。)
シー:貴方がいなければ、俺はきっと立ち直れなかった・・・。
青:お前を助ける事が出来て、本当に良かった。生きていてくれて・・・。
シー:まだ、死ぬには早過ぎますから。

そう言ってシーは笑う。
青も笑みを浮かべる。
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