□通りすがりの3
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ここ最近は病院に頻繁に足を運ぶようになった。
別に怪我をした訳でもないし、体調を崩した訳でもない。
目的はただ一つ。
彼に会いに行く事だ。
かと言って勤務中に押し掛ける程自分も無神経ではない。
医療忍がどれだけ忙しいのかは流石の自分でも想像がつく。
こう見えて結構他人の時間の都合には人一倍気を遣う方だった。
病院の空き時間(昼休憩の空いた時間)を狙って、ザジはシーを訪ねるようにしていた。
初めはこちらから彼を探して昼休みで一息ついているシーを見つけて、声を掛けると言う形でコンタクトを取っていた。
それが数日続いた後、二人は自分達だけが分かる合図を使う事に決めた。
提案したのは彼の方だ。

きっかけは何気なく自分が打ち明けた相談だったと思う。
最初の一言は確かこうだった。

「逆感知が、今一まだよく分かってないんスよね。」

こちらの言葉に興味深そうにシーは訊ねてきた。

「逆感知がか。」
「そうなんスよ。まだ感覚が掴めてなくて。」

敵が感知してきた所を逆手に取り、逆に相手のチャクラを感じ取って居場所を突き止める。
それが逆感知だ。
肩をすくめてザジは答えた。

「感知能力者って少ないんですよ、うちの里も。感知タイプの多さで有名って言われてますけど。」
「そうなのか?」
「俺やシーさんみたいに体に感知能力持ってる人は数えたら少ないっスよ。それこそ少数派だから。」
「成程。」

ため息をついて続ける。

「一番手っ取り早いのは同じ能力持ちの人に感知してもらうってやり方なんだけど・・・俺が言いたい事、分かります?」
「何となく。」

暫く間を置き、やがてシーが言った。

「要するに修行相手がいないって事か。」
「そういう事になるっスね。一応いる事はいるけど、忙しいから・・・。」
「・・・。」

彼が話を提案したのはこの時だった。
生憎シーにもザジの修行に付き合ってやれる余裕はない。
それでも限られた時間を有効に使う事は出来る、と彼は言った。
まず病院に着いたザジがシーを感知する。
チャクラ感知はチャクラを発信し、標的のチャクラと自分のチャクラを接触させる事なのだと言う。
感知タイプはそのチャクラ同士がぶつかった時に起こる共鳴を察知する事が出来る体質を持つ人間の事なのだ、とシーは説明した。
ザジがそうして飛ばしたチャクラをシーが感知し、今度は彼がザジにチャクラを飛ばす。
それで一連の合図が完了する。
そしてシーが待つ場所にザジが向かう。
こうすれば効率も良いし、相手が自分を認識した事が分かるからだ。
ザジも感知能力を鍛える事が出来る。
一石二鳥の方法だとザジも思えた。
その日以来これが自分達の合図になった。

今日も空いた時間を見計らって病院に足を向ける。
日を重ねて彼に会ううちに、ザジはよりシーに尊敬の念を抱くようになっていた。
同じ感知能力者として。
そして何よりも一人の大人として。
それと同時に他の先輩達と同じように彼の事を慕い始めてもいた。
恐らく十歳程年上なのだろうが、それでも彼が自分と同じ若い年代である事には変わりない。
だからなのか不思議と親しみやすさを感じたのだ。
真面目で厳しそうな見た目とは裏腹に、意外にもシーはフランクな人柄を持った人物だった。
普通に笑うし気さくな一面も多く持ち合わせている。
それで余計に親近感が湧いたのかも知れない。
気が付けばすっかり彼と話す事に馴染んでいた。
それに彼のチャクラにも好感を抱いた。
シーのチャクラは他のどの人にも当てはまらない、誰よりも落ち着いたチャクラだった。
いつもヘラリと笑うか「良い子」でいる事が多いザジも、自然と有りのままの自分で彼と接する事が出来た。
不思議とそうさせてしまう雰囲気が彼にはあったのだ。
どんな事も包み込んでしまいそうな雰囲気が。
その何とも言いようがない感覚に、ザジは純粋に居心地良さを覚えた。
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