□日はまた昇る16.5
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苦しい―――。
痛い―――。
誰か―――。

誰だろう、この声は。
懐かしい馴染みのある声だ。
━・・・?
まどろみの中で静かに目を開けた。
視界一面が明るくなる。
見渡す限りのセピア色。
自分は大きなスクリーンの前で、パイプ椅子に腰掛けていた。
スクリーンはセピア色の映像を映し出していた。
曇った空。
切り立った山。
そして建ち並ぶ塔や街並み。
自分達の里の風景だ。
ぐるりと周囲を見渡す。
何もない。
スクリーンと、椅子と、自分以外は何も。
ただひたすら真っ白な世界がそこには広がっていた。
どこか現実離れした世界。
ここはどこなのだろう。

と、突然映像が切り替わった。
じっとシーは目の前のスクリーンを見つめた。

一人の子供が泣いている。
髪は金髪、肌は白かった。
たった一人で立ち尽くし、俯いて涙を流している。
その数メートル離れた先には。
━?
目を見開いてスクリーンを見つめた。
子供だ。
もう一人の子供がそこに立っている。
泣いている子供と同じ、淡黄色の髪と白い肌をしていた。
まるで双子のように。

スキップ。
画面が切り替わる。

今度は演習場だ。
腕を包帯まみれにした金髪の子供が、クナイを何度も目の前の丸太に投げ付けている。
汗を垂らして荒く息をしながら、ひたすら一人残って修行をする子供。
そしてそこからやや離れた所には。
━また、あの子供・・・。
やはりもう一人の金髪の子供がそこにいた。
あれは一体?
あの子は誰だ。
忘れている気がする。
大切な物を。
何かとてつもなく大切な事を。
俺は一体何を忘れている?

再びスキップ。

次々に場面が映し出され、切り替わっていく。
一人で本を読む子供。
部屋で一人で過ごす子供。
数人の子供達にちょっかいを出され、それを無視して通り過ぎていく子供。
中忍の年上の少年達に背中を指差されている子供。
そして、背の高い、白髪に黒い肌をした少年と共に並んで立っている子供。
黒い肌の少年と話すその子の表情は、その中でも一番笑顔が多いように見えた。
親友なのかも知れない。
否、親友なのだ。
シーには確信が出来た。
何故なら、自分が一番それを分かっているからだ。
そして、ある事にも気付いていた。
決まって必ず金髪の子供から離れた所に、もう一人彼とそっくりな少年がいる事に。
その少年はいつも子供を遠くから見つめていた。
一歩離れた場所で、見守るかのように。
黒い肌の少年と話す子供を見守る時、少年は何故か歯痒いような、寂しそうな表情を浮かべていた。
「友達を取られてしまった」とでも言いたげなように。
あの子は誰だ?
あの子は一体?

再度スキップ。

突然画面が真っ暗になる。
やがて再び映像が映し出された。
セピア色の画面。
どこか見覚えのある光景が広がっていた。
誰も寄り付かない、忘れ去られた倉庫の中。
冷たいコンクリートの床に、同じ位無機質な壁。
そして、薄暗い倉庫の奥に。

『痛い―――。』
『苦しい―――。』
『誰か―――。』

━・・・?
声が聞こえてくる。
必死に縋るような、苦しげな声。
怯えるような声。
少女のようにも少年のようにも聞こえる、独特な中性的な声。

画面が切り替わる。

薄暗い倉庫の奥。
誰かがそこにいる。
否、何人もの誰かが。
集団で固まって何かをしている。

さらに画面が切り替わる。

五六人の大人達がそこに群がっていた。
何かを取り囲むように、円を描いて何かを見下ろしている。
皆が皆、下衆な笑みを浮かべて。
ある者は何度もごくりと唾を飲み、別の者は興奮を隠し切れていない様子だった。
何を見ている?
何をしている?
何をそんなに楽しんでいる?
あんた達は何に欲情している?

再び画面が切り替わる。
そして。

━あ・・・。

大人達が取り囲んでいる中心、彼らの視線の先。
それが突然目の前に映し出された。
思わず息を止める。

━!

子供だ。
金髪の、白人の子供。
歳は恐らく十五歳位だろう。
無意識にハッと見つめてしまいそうな小綺麗な顔をした、華奢で色白の体をした、子供。
大人に近付いた、それでもまだ薄い体。
少女だろうか。
それとも少年?
その容姿は女にも男にも、どちらにも見えた。

『しっかり抑えとけよ。』
『分かってるって。』
『ま、どの道逃げられねーけどな。』

見下したような笑い声が倉庫に響く。
一人の男(黒人だ)がその子供を組み敷き、覆い被さっている。
激しく腰を動かし、しきりに呻いている――興奮と歓喜の雄叫びを。
男に揺さ振られるままに子供は涙を流し、叫んでいた。

『やめろ―――。』
『嫌だ―――。』
『こんなの嫌だ―――!』

悲痛な叫び。
声は掠れ、嗄れ切っていた。
だが大人達は誰一人助けてはくれない。
嘲笑うように笑い声を上げて、何の罪もない子供に向かって言い放つ。

『やっぱこっち系に向いてたぜ、こいつ。』
『女みたいな顔と体してる癖に、野郎の物は付いてるんだもんな。最高だよ全く。』

再び笑い声。
そして喘ぎ声と、呻き声と、悲鳴。
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