□座に服す
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+ユギトとシーが姉弟設定
+シーが22歳、ユギトが24歳(過去話設定)
+思い切り捏造注意

茶器を受け皿に戻しながら男性が言った。

「そうか、では二位家も暫くは安泰になる事だろうな。」
「いえ、まだ我々は若輩です故。先の事は分かりません。」
「尾獣の力もようやくコントロールできるようになったばかりですから。」

凛とした表情を崩さずシーは真向かいで胡坐を掻いている男性に告げた。
隣に座るユギトも微かな微笑みを見せながらやんわりとへりくだる。
二人の言葉に男性が笑って続けた。
傍に置かれた急須を手に取り、茶器に茶を注いでいく。

「そんなにへりくだる事はないさ。お前達二人は優秀な忍だよ。もっと自信を持ちなさい。」
「だってさ。あんたももっと肩の力お抜きよ。」
「・・ユギト、お前はもっと気を引き締めろ。」

からかうように彼女がこちらの肩を指で突いて言う。
こちらに向かって悪戯っぽく笑う姉にシーはじろりと鋭い一瞥をくれた。
いくら自分達が名門の一族とは言え仮にもここは上役の面前なのだ。
軽口は余所で叩いてほしい。
突然朗らかな笑い声が部屋に響く。
二人同時に男性を振り返ると、相手の男性は笑顔を浮かべていた。
どこかおかしそうだ。

「何年経ってもお前達の掛け合いは変わらんな。おかげでホッとした。」
「今でも喧嘩が絶えませんよ。性格が正反対なもので。」
「何、『喧嘩する程仲が良い』と言うだろう?お姉さんを大事にな、シー。」
「分かってます。」

頭を下げて返事を返す。
と、再びユギトが茶々を入れてきた。

「よく言うじゃないか。こないだなんか容赦なく私にアッパー食らわしてきた癖に。」
「・・一旦黙れユギト。」
「こらこら。全く、気性の荒さだけは雷影様譲りだ。本当昔から変わっとらんなぁ・・・。」

その後いくらか話を交わし、男性は去って行った。
最後にこう言い添えて。

「お前ら二人はお互い家族なんだ。喧嘩は良い事だが程々にしとけよ。」

遠ざかって行く自分達の上司の背中を黙って二人で見送った。
やがてユギトがポツリと呟く。

「心配しなくても、私達はいつだって絆で結ばれてるよ。」

畳が敷き詰められた部屋で毎回のように交わされる会話は言わば社交辞令のような物だ。
これで一体何人目だろうか。
内心では立て続けにやって来る連日の来訪者にそろそろ溜息をつきたくなっていた。
ユギトも自分と同じ思いでいるのだろう。
さすがに長時間畳で正座はきつい物がある。
里の上役達や名門の一族の者が訪ねて来ては二人に賛辞を呈していくのだ。
それも仕方ない事なのかも知れない。
『二位の長男が「シー」の名を受け継いだ。』
『二位の長女が雲隠れの人柱力として、手懐ける事が難しい二尾の力を上手く使いこなせるようにまでになった。』
里中がその二つの話題で持ち切りになっているのだ。
里にとっては勿論どちらも喜ばしい事に違いない。
『やはり雲の里に二位姉弟在りき。』
皆が口を揃えてはそう讃えて去って行った。
二尾の人柱力として、何より雲のくの一としてめきめきと上達を見せる姉。
里の中でも優れた感知能力を持ち、医療忍としても名を轟かせている弟。
一族で同時に二人もの優秀な忍が輩出されるのはなかなかない事なのだそうだ。
雷影一族の血が流れる家系と言う事もあり、周囲からの期待も相当大きな物だった。
元々が女系家族である為、代々二位家から輩出された忍はそのほとんどが女性だ。
シーはその中でも数少ない男性である。
ただ一つ一族の宿命か呪いなのか、一見すると女に間違われる事もある整った容姿は彼女達と全く同じだった。
淡黄色の髪と漆黒の瞳。
そして白い肌。
二位の血を持つ人間は全員がその特徴を受け継いでいる。
黒人である雷影一族の血も混ざっている為混血と言ってもいい。
俗に言う「ソルトアンドペッパー」と言う奴だ。
言うなれば自分達は特殊な家系の中に生きているのだ。
二尾を宿す人柱力になる人物は、代々二位一族の女性だと決まっている。
そして今はユギトがその役目を担っていた。
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