□日はまた昇る8
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パチリと目が覚めた。
むくりと顔を上げてダルイは部屋を見回した。
いつの間にか眠ってしまっていたのだろう。
ベッドに突っ伏すようにして顔を腕に埋めていた。
集中治療室には自分達しか人はいないらしい。
臨時の医療忍としてここを当たっている青も今はいないようだ。
もしかすると気を遣ってくれたのかも知れない。
目の前のベッドに目を移す。
清潔で柔らかなシーツの上に、痩せた相方の体が寝かされていた。
ガーゼやテープまみれの顔。
華奢な白い体は簡素な黒い着物に包まれている。
掛け布団の上に投げ出された白い腕にはいくつもの点滴チューブが繋がれている。
腕の他にも体のあちこちからチューブが伸びており、ベッドの四方に置かれた医療器機にそれらが繋がれていた。
定期的な栄養補給のおかげか顔色はだいぶ良くなっており、体つきも少し戻ってきたように思う。
少なくとも今は穏やかに眠っているようだ。
それでもシーの体に刻みこまれた傷は深く、なかなか癒えてはくれないに違いない。
恐らく心の傷も。
むしろそちらの方がもっと時間が掛かるかも知れない。

自分の左手に目をやると、彼の白い手が重ねられているのに気付いた。
眠っている間に感じていた感触はこれだったのか。
そしてここに来た時に交わした青とのやり取りを思い出す。

『時々でいいから手を握ってやってくれ。』
『手、ですか?』
『我々のような感知能力者は周囲のチャクラを感じ取る。親しい相手のチャクラに触れると安心が得られるんだよ。』

黙って白く細い、すらりとした手を見つめた。
感知能力を持った人間は根本的に体と脳の作りが違うのだろう。
昔からこの同僚はチャクラで人を見分ける癖があった。
人によってチャクラの質に違いがあるらしく、その人の性格や人間性が全てそれに反映されるのだそうだ。
違いがあればチャクラの好き嫌いと言う物も出てくるようで、彼もそうだった。
任務先で初対面の相手に会う度に「コイツのチャクラは苦手だ」「アイツは冷たいチャクラをしてる」と口にする事が度々あった。
それはシーにしか分からない感覚と言ってもいい。
感知能力を持たないダルイには残念ながら、相方と同じ物を感じて共有する事は出来ない。
だから時々こう思いもする。
こいつが感じ取っている物はどういう物なのだろう。
こいつから見た俺のチャクラはどんなチャクラをしているのだろう、と。
自分のチャクラで果たして彼は安心するのだろうか。
━・・・でも、そう言えば。
自然と意識は過去へと向かう。
思えば自分といる時のシーは解れた表情をする事が多かった。
無表情ではあるものの、その瞳にはダルイに対する確かな信頼と安堵の色が浮かんでいた。
体を重ねる時はもっとそれが顕著だった気がする。
他者と肌を合わせる事は、感知タイプの人間からすれば「相手のチャクラと交わり合う」事と同じなのだろう。
相手の熱とチャクラを同時に受け止める。
普通の人間にはない二重の感覚。
人一倍敏感なのはそのせいなのかも知れない。
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