□日はまた昇る4.5
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霧が深い。
眉を顰めて青は辺りを見回した。
眼下には尖った岩が突き出した草原が広がっている。
雷の国に特有の地形だった。
これと言って変わった所は何もない。
それでも何かが引っ掛かる。
この違和感は何だ。

「先輩?」

呼び掛けられ、後輩を見下ろす。
ヒラメカレイを背負った長十郎がこちらを見上げていた。
不思議そうに彼が尋ねる。

「どうかしました?何か感知したとか。」
「いや、今の所は何も感じない。ただ何か引っ掛かるんだが。」
「引っ掛かるって・・・。」

長十郎も同じようにキョロキョロと草原を見渡した。
そして閃いたように言った。

「ひょっとして、この霧ですかね。」

それだ。
ようやく自分が感じていた違和感の正体が分かる。
この国では霧など滅多に出ない筈だ。
それが今は水の国と変わらない位に深い霧が立ち込めている。
━奇妙だ。
顔を顰めて再び歩き出した。
長十郎も後に続く。
歩きながら彼が言葉を紡いだ。

「確かに変ですよね。ここ一帯って霧なんか出ましたっけ?」
「雷の国は我々の国よりも気候が温暖だ。普通ならあり得ない。」
「なら、何でこんなに霧が出てるんでしょうね。」

黙って後輩を見下ろすと、彼は眼鏡を外して袖でレンズを拭いていた。
霧の中にいるせいで曇っているらしい。
眼鏡を掛け直してヒラメカレイを背負い直し、そのまま彼は黙りこくった。

今回も問題なく事を進める事ができた。
偶々任務で雷の国に立ち寄る事になっていたのだ。
今は丁度里へ戻る道中だった。
それでも頭の中ではいつでもチャクラを感じ取れるよう意識を集中させておく。
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