□日はまた昇る
1ページ/7ページ

部屋はすっかり明るくなっていた。
窓から射し込んでくる日の光が眩しい。
パチパチと目を瞬かせて、ベッドから起き上がった。
傍に置いてある時計に手を伸ばし、自分の顔の前に持っていく。
時計は昼前を指していた。
思い切り寝坊だ。
くしゃくしゃになった赤毛を掻き分け、カルイは部屋を見回した。
部屋はしんとしている。
静かだった。
━・・・オモイはもう、行っちまったのかな。

今日は任務がない日のはずだ。
オモイ自身がそう言っていた。
だとしたら、どうしてこんなに静かなのだろう。
ひょっとすると、棒付きキャンディでも買いに行ったのかもしれない。
時間ができれば、オモイはしょっちゅうキャンディのストックを買いに行くのだ。
━・・・とりあえず、起きるか。
ベッドから這い出ると、自分の部屋を出た。
そのまま作り付けの洗面台に向かう。
鏡の前に立って自分の顔を映すと、思わず顔をしかめた。
━・・・ひっでー顔。

この二週間くらいの間に、すっかり自分はやつれてしまった。
何せ毎日、夜中に眠る度にうなされていたのだから。
しばらくはオモイと一緒に二人でベッドで寝た。
小さい頃は普通にそうやって寝ていたし、カルイもオモイもあまりそういう事でお互いを意識する事はなかった。
だからこちらからそう頼んだ時も、オモイはあっさりOKしてくれた。
何年かぶりに二人で寝た気がする。
おかげで少しは安心することができた。
それでも夢には毎回あの時のことが出てきた。
うなされる度にオモイに起こしてもらい、また眠る、の繰り返しだった。
そのせいかあまり眠れていない。
それでも一人で寝ているよりはマシだと思う。
こういう時は素直に自分の要望に応えてくれる彼に、感謝せずにはいられなかった。
何だかんだ言ってオモイは良い弟だと思う。
弟と言っても、自分と同い年なのだけれど。
友人でもあるし、家族でもあるし、相棒でもある。
少し特殊な関係とでも言おうか。
とにかく自分にとっては特別な存在に変わりはない。
この二週間ほどの間、オモイはずっと自分の心の支えになってくれていた。
自分も何とか立ち直らなければ。

水道の蛇口をひねり、水を出す。
顔を洗い、髪を水で濡らした。
こうでもしないと自分の髪は癖が直らない。
タオルで頭を拭き、ブラシで髪を梳いた。
何とかいつも通りに髪が整う。
再び鏡に自分を映してみる。
よし。
さっきよりはだいぶマシだ。
疲れた雰囲気だった自分の顔は、今はさっぱりしていた。

再び自分の部屋に戻った。
戻り際にオモイの部屋をチラッと覗く。
部屋には誰もいなかった。
思った通り出掛けているようだ。

部屋に戻ると、棚に置いてあるアクセサリー入れを手に取った。
箱の蓋を取り、お気に入りのピアスを取り出す。
いつも付けている、小さな金色の玉が付いている奴だ。
鏡を見ながら慎重にそれを耳に開けた小さな穴に通した。
ピアスを付け終えると、壁に掛けた額当てを取った。
ほかの人はハチマキのように頭に巻き付けているが、自分はそんな付け方が嫌だった。
髪を上げ、額当てをバンダナのように頭に巻き付ける。
━隊長達とか、アツイさんはしてないよな、額当て。
腕やほかのところに巻き付けるどころか、額当てを身に付けてすらいない自分の先輩達を思い浮かべた。
まだ自分の方が真面目な方だ。
オモイなんかはアレを普通にそのままハチマキみたいに巻いている。
時々それでこちらが彼をからかうこともある。

━・・・あ、でも。

一人だけ、先輩達の中にいる。
いつも真面目に額当てをしている人が。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ