□とある先輩との会話
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右腕に包帯が巻かれていく。
手際良く行われていく手当てに、思わず見とれてしまいそうになった。
ほっそりとした白い手が、丁寧に自分の浅黒い腕に包帯を巻いていく。
ゴツゴツしたタコが目立つ自分の手とは大違いだ。
彼の手はそういったタコやさかむけが一切ない。
純粋に綺麗な手だと思った。
手の大きさも彼の方が大きい。
改めて自分はまだ子供なのだと実感した。

顔を上げて腕から目を移す。
てきぱきと手を動かすシーの顔をオモイは黙って見つめた。
無表情で何も言わずにシーはオモイの手当てをしている。
流れる沈黙に、オモイはますます気まずい気持ちになった。

「(どうしよう、何かめちゃくちゃ緊張する・・・。)」

空気が重たい。
自分の心拍音が聞こえてきそうだった。
ただでさえ自分はシーに苦手意識を抱いているのだ。
こうして二人きりになるのはおそらく初めてだろう。
いつもなら彼といる時は決まって傍にカルイやダルイがいた。
シーと仲が良い誰かと一緒でないと、緊張で体が強張ってしまう。
元々が内気な性格なのも相まって、今は余計にガチガチに緊張していた。

「(何でなんだろな・・・。嫌な人じゃないんだけど。)」

ていうかむしろ良い人なんだけど。

別に彼が嫌いな訳ではない。
直感的に良い人だという事は何となくわかる。
今だってこうしてわざわざ時間を割いてオモイの手当てに付き合ってくれているのだ。
雷影の側近でもあるシーはただでさえ忙しい身だった。
そう思うとすまない気持ちになった。

「おい。」
「!っな、何スか。」

声を掛けられ、心臓が跳ね上がりそうになった。
思わず身構える。
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